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046.精霊術士と魔法剣

 魔法剣……それは、特定の職業にだけ、使用が許された魔法と剣の融合技である。

 剣に魔法の効果を込めることで、通常の斬撃の攻撃力を上昇させると同時に、炎傷や凍結などの、様々な副次効果を相手に与えることができる。

 チェルはただの剣士。自身が魔法を使うこともできなければ、当然、魔法剣など、これまでやってみせたことはない。

 だが、しかし、彼女は、コロモのファイヤーボールの魔力を、驚くほど完璧に剣へと定着させていた。

 大上段から振り下ろした炎の剣が、唐竹割りの如く、ダイキャスターの脳天を撃つ。

 すると、それまで、傷一つつかなかったその装甲に一筋の亀裂が走った。

 チェルの剣でも、コロモの魔法でも傷つけられなかった装甲に、それを同時に叩き込むことで、初めて傷を入れることに成功したのだ。


「いける!!」


 そのまま、連続で炎の剣を振るい続けるチェル。

 両腕をセシリアさんのところに差し向けているダイキャスターは、チェルの素早い動きに翻弄されている。

 すでに熱線という隠し玉を披露してしまっている以上、それを避けるようなチェルの立ち回りは見事なものだった。

 そして、ついに……。


「はぁああっ!!」


 振り上げた剣閃が、ダイキャスターの右腋を捉え、そのまま、その肩を胴から切断した。

 すると、同時にチェルの剣が粉々に砕け散る。

 魔法剣と奴の硬い装甲による不可に、耐えられなくなったのだ。


「今だ! セシリアさん!!」


 僕は、全力のバフをセシリアさんへとかける。

 チェルの攻撃で、ダイキャスターが隙を見せたことに気づいたセシリアさんは、迫りくる2つの拳を弾き飛ばすと、槍を腰だめに構えた。


「全力!! 闘気覚醒!! 行くぞ!!」


 駆ける! 駆ける!! 駆ける!!!

 ボスまでの一直線を彼女はひたすら駆け抜ける。

 その度に、槍が放つアメジストのような色の光が強くなる。

 そして……。


螺旋穿孔(らせんせんこう)!!」


 まるで渦を巻くように闘気が迸り、その切っ先が、ダイキャスターの胸の装甲板を捉えた。

 おそらく、奴の装甲で一番硬い部分。しかし、それは、圧倒的破壊力を秘めたセシリアさんの槍の前に、脆くも崩れ去る。

 胴体の真ん中に大穴を開けたダイキャスターは、槍の刺さった状態のまま、その身体を爆散させた。

 煙が晴れると、そこには、槍を振りかざすセシリアさんとチェルが、互いの健闘を称え、拳を打ち合わせる姿があった。

 そうして、チェルは、カメラに向けて、高々に宣言する。


極光の歌姫ディヴァインディーヴァ!! 堅牢の魔窟の攻略完了よ!!」




 さて、こうして、今までで一番の苦戦を強いられたもののボスを撃破した僕達。

 その目の前には、金色に輝く宝箱が鎮座していた。

 今までのダンジョンでは、ボスドロップはあまりレア度の高いものはゲットできていなかったが、今回はエリゼがいる上に、チェルのユニークスキルとの相乗効果は実証済みだ。

 みんなからも、エリゼへと熱い期待の視線が送られている。


「では、開けます!」


 そうして、エリゼは宝箱を開けた。

 宝箱からまばゆいばかりの光が弾ける。

 ようやく目が慣れた頃、そこにあったのは、青白い輝きを放つ、白銀の剣だった。


「こ、これは……」


 エリゼが徐にそれを手に取る。


「エリゼ、それ、もしかして……」

「はい、これ……聖剣です」


 ダンジョンからドロップする装備品の中でも、最高峰の武器として名高い聖剣。

 かつて、暁の翼にいた頃も、一度だけお目にかかったことがある。

 あの時は、ヴェスパが、「俺のおかげだぜ、大将!」と数か月イキっていたことを今でも思い出す。

 まあ、実際は、エリゼのブレッシングの力だったんだろうけど、それだけ自慢したくなる気持ちもわかる。

 それくらい、聖剣というのは、優秀な武器なのだ。

 単純な攻撃力の高さと頑丈さはもちろん、魔力親和性も他の武器と比較して、圧倒的に優れている。

 確か、伝説の金属、オリハルコンでできているとかなんとか。

 いかに、武器がドロップしやすいこのダンジョンと言えど、ここまで最高峰の性能のものが手に入るのは、やはりエリゼとチェルのスキルのたまものと言えた。


「どうやらディヴァインブレードという名前のようです」

「へぇ、私達のパーティーにおあつらえ向きの名前じゃない」

「聖剣となれば、装備するのはチェルだな」

「剣が折れてしまったところだったし、ちょうどいいわ。必ず使いこなしてみせる」


 エリゼから手渡された聖剣の感触を確かめるように握るチェル。

 そうだ。あの時、チェルは魔法剣を使った。もしかしたら、チェルは……。


「さあ、ドロップでよい物が出たからといって、あれをやらないわけにはいかないわね」

「は、初めてなので、緊張しますね」

「ふむ、不思議な感覚だが、やってみせよう」

「5人での初ライブ、胸が高鳴りますね。師匠」

「ああ、アリエルも一緒に楽しもう」


 そうして、5人での初めてのボス撃破ライブを披露した僕達の人気は、さらに上がっていくのだった。 

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