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044.精霊術士とユニークスキルの恩恵

「あの、ノエル、思うんだけど……」


 ダンジョンに入ってから3つめの宝箱を開けた直後、エリゼがついに言った。


「ちょっとおかしい頻度で、レアアイテムばかり手に入っているような」

「うん、僕もそう思う……」


 最初の宝箱で杖が出た後、立て続けにかなりレア度の高いアイテムが出ている。

 いずれも装備品などではなく、回復系のアイテムだったが、高難度のダンジョン攻略では必須になるような、全体回復アイテムだ。

 需要に対して、供給がまったく間に合っていないようなアイテムなので、市場価値もかなり高く、これを売るだけでもかなりの収入になる。


「エリゼは絶好調のようだな。かくいう私も、ノエルのバフのおかげか、今日は"闘気解放"の威力が跳ね上がっている」

「えっ……?」

「なんだ、ノエルではないのか?」

「う、うん、僕は、誰かのスキルそのものにバフをかけるなんてことは……って、あっ」


 僕の視線に誘導されて、全員の視線が、チェルへと集まる。


「も、も、もしかして……」

「あー、みんな私のユニークスキルの効果を受けてるんじゃない?」


 そうだった。チェルのユニークスキルは【スキル効果上昇・極大】。

 仲間のユニークスキルの効果を飛躍的に上昇させることができ、僕の微量の効果しかない【才覚発現】の経験値獲得アップ効果を最大限まで引き上げている。

 つまり、他のメンバーにもその効果は適応されているというわけで……。

 コロモは魔力指向性のさらなる向上……つまりファイヤーボールの威力がさらに上がっている。

 セシリアさんは闘気のパワーアップ……すなわち攻撃力の大幅上昇。

 そして、エリゼは、回復量の大幅アップに加えて、幸運値の上昇……要するに、宝箱から常にレアアイテムが獲得できる。

 うわぁ……なんというか。


「こういうのチートっていうんだっけ?」

「なんだか人聞きの悪い言い方ね」

「そ、そっか。実は以前から、練習の時よりも、チェルシーさんと攻略をしているときの方が、ファイヤーボールの威力が上がってると思っていたんです……」

「ふむ、まさか、そこまで有能なスキルを所持しているとはな」

「仲間のユニークスキルをパワーアップさせるなんて……まさに、みんなを鼓舞するアイドルそのものじゃないですか」

「ま、仲間全員を対象に出来る確証はなかったけどね。でも、結果オーライ」

「あ、また、宝箱です」


 そんなことを話しているうちに、また、新しい宝箱を発見した。

 もし、本当に、他のメンバーのユニークスキルまでパワーアップしているとすれば、ここでも、レアアイテムが獲得できるはずだが、はたして……。


「あ、開けます!」


 エリゼが、再び自身にブレッシングをかけて、宝箱へと手をかける。

 パワーアップした【女神の加護】で補正された幸運値に、さらに魔法によるバフをかけた状態。想像するするだにとんでもない幸運値になっていそうだが、はたして……。


「えっ……?」


 エリゼが宝箱を開いた瞬間、全員の身体が赤い光を放った。

 これは、もしかして……。


「ステータスアップ……か?」


 宝箱の中には、ごくまれに、仲間のステータスを向上させるようなものがある。

 例えば、全体の攻撃力や防御力、素早さや魔力などを、上昇させるものだ。

 これらの効果は微量ではあるが、永続的にその人物のステータスに上昇補正をもたらす。

 そして、今の光の色は"赤"。赤は確か、攻撃力アップの色だ。


「なんだか、少し力が上がった気がするわね」

「いや、チェル、これ凄いよ。ステータスアップの宝箱なんて、冒険者人生で、1度見つけられるかどうかっていう……」

「ふむ、私も体験するのは初めてだが……凄いものだな。確かに、力が上昇したのを感じる」


 セシリアさんが確かめるように槍をブンと振る。

 後衛の僕にとってはあまり意味がない効果かもしれないけど、チェルやセシリアさんにとっては、かなり恩恵の大きいステータスアップだ。


「エリゼ……」

「な、なんだか、少し恐ろしくなってきました……」


 そりゃあ、そうだろう。

 もし、この頻度で、全員のステータスを向上させていけるとすれば、いわゆるカンストと呼ばれる人間という種の限界にすら到達してしまう可能性も……。


「ま、まあ、毎回こんな宝箱見つけられるわけじゃないだろうし」

「そうですよね。はは……」


 2人して空笑いしながら、見つめ合う僕とエリゼ。

 でも、お互いなんとなく思っていた。

 チェルがいれば、もしかして、その可能性もなくはないのではないか……と。


「さあ、上がった力で、ボスに一泡吹かせるわよ! 極光の歌姫、ゴーゴー!!」


 意気揚々と歩き出したチェルの後姿を眺めながら、僕はその末恐ろしさを改めて感じたのだった。

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