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019.精霊術士、道を切り拓く

 ダンジョンに入ってから、30分ほどが過ぎた。

 驚くほど順調に、攻略は進んでいる。

 魔物の数はなかなか多いが、コロモの高速詠唱とチェルの剣技だけで、ほぼほぼ切り抜けることができている。

 やはり、この2人の才能はかなりのものだ。

 初めてのダンジョン攻略で、ここまでの働きができる者は、なかなかいない。

 パーティーの足をよく引っ張ってしまっていた、駆け出しの頃の僕とは比較にならないな。

 

「2人は天才かもしれない」

「なによ、ノエル。しみじみと」


 こういう気持ちになるのも仕方ないというものだ。

 レベルの方も、先ほどから加速度的に上がっており、なんと、チェルに至っては、すでに、レベル12。

 このダンジョンの攻略を開始してから、7つもレベルが上がった計算だ。

 コロモの方もつい先ほどレベル10に到達した。

 明らかに異常な成長速度。

 先日考察した通り、僕の【才覚発現】とチェルの【スキル効果上昇・極大】の効果で、獲得経験値がえぐいことになっているようだ。

 かくいう僕も、ついぞ、上がることのなかったレベルが、なんと1つ上がって、44になっていた。

 上級ダンジョンで狩りをしていても、なかなか上がらなかったというのに、中級ダンジョンでレベルアップしてしまうことになるとは……。

 あまりにとんとん拍子に行き過ぎて怖いくらいだ。

 その上、なにより嬉しいのは、戦闘が終わるたびに、彼女達2人が、僕にお礼の言葉を述べてくれたり、褒めてくれることだ。


「ノエル、助かったわ!! ありがとう!!」

「師匠、すごいです!! 完璧なタイミングでした!!」

「さすがね、ノエル! 今のは、バッチリだったわ!!」

「あれは師匠じゃなきゃできないです!! 私もあんな風にできたら……!!」


 毎回、そんな風に言ってくれるものだから、僕の平均よりずいぶん低かったであろう自己肯定感がうなぎのぼりだ。

 暁の翼にいた時は、戦闘が終わるたびに、ヴェスパやメグから、役立たずやらなんやら文句を言われていたもんなぁ。

 あの頃を思うと、今のこの状況が、どれだけ幸せなことか……。


「あ、ノエル、ついにたどり着いたわよ」


 幸せをかみしめていると、いつしか、目の前に深い霧が立ち込めていた。

 

「これが、下調べの時に言っていた……」

「そう、ダンジョン名の由来にもなった【迷霧】よ」


 迷いの霧と書いて、迷霧。

 ボスのいる場所への行く手を阻む、このダンジョン一の難所といってもいい。

 この霧は、瘴気を伴ったものであり、時間の経過によって、出たり消えたりするものではなく、常にこの森のいくつかの場所を覆っているものだ。

 冒険者は、見通しの悪いこの霧の中をボスのいる場所を探して彷徨わねばならない。

 当然、霧の中にも魔物は出て来る。

 このダンジョンの危険度を一気に跳ね上げている要因がこの迷霧だった。

 でも、その対応策は、すでに相談済みだ。


「頼んだわよ。ノエル」

「うん」


 僕は2人の前へと進み出る。


「サー・ウィーペル」


 その瞬間、森を風が駆け抜けた。

 普通の風魔法では、掃うことのできない迷霧。

 だが、大精霊であるアリエルの魔力の籠もった風であれば、迷霧ですら掃うことができる。

 数秒間、振り荒れた風とともに、濃く立ち込めていた霧は、きれいさっぱりとなくなっていた。


「さすが、ノエル!!」

「師匠!! 素晴らしいです!!」


 必要以上に大仰な動作で、2人が僕の事を持ち上げてくれる。

 どうやら、映像水晶(パルスフィア)へのアピールらしい。

 今起こした風も、一般の人には、僕がやったことだとわかりにくいもんなぁ。

 だから、2人はこうやって、僕を褒めることで、風が僕の能力によるものであると、印象付けようとしてくれているのだろう。


「ほら、ノエルもアピール」

「あ、うん」


 小声でチェルに言われ、僕は、空を飛ぶカメラに向かって、控えめにピースサインを送った。

 さあ、霧が晴れた今、ボスとのバトルはもう目前だ。

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