表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

121/123

121.精霊術士と絆の聖剣

 白の魔王の障壁、それは、どんな攻撃も通さない絶対防御の盾だ。

 チェルと僕の覇王の剣オーバーロードブレードやセシリアさんの技でも破れない強固な防御壁。

 まずは、それを完膚なきまでに破壊する。


「精霊憑依!!」


 アリエルと融合した僕は、白の魔王へと飛翔した。

 まるで勇者のような剣と魔法の波状攻撃を疾風と化した身で、躱しながら、奴の懐へと入り込む。

 両の手に展開した風の刃を、一本の巨大な刃へと統合し、斬りつける。

 だが、もちろんそれは、障壁に阻まれた。

 精霊憑依状態の攻撃力でも、この防御壁を破ることは不可能。

 だが、それは織り込み済みだ。

 僕は、刃が防御壁に触れた瞬間、その障壁の性質を理解する。

 この壁は、魔王が自らの魔力によって作り出したもの。

 同じ魔力であれば、中和することだって、できるはずだ。

 僕は、自らの肉体を捨て、今度は、アリエルへとその精神を宿す。

 チェルを救出するときに使った逆精霊憑依。

 アリエルの身体に、僕の精神を憑依させる。

 そうすることで、自然そのものとなった僕は、白の魔王へとバフをかけた(・・・・・・)

 その身体に絡みつき、魔王に肉体にバフをかけることで、その絶対障壁を生成するための魔力にゆさぶりをかける。

 つまり、それは、バフをデバフとして使うということ。

 瞬間、魔王の絶対防御が揺らいだ。


「今よ!!」


 チェルの叫びと共に、魔法剣と闘気槍が魔王の身体を穿った。

 僕のバフにより、絶対防御の維持ができなくなった魔王は、2人の攻撃をまともに喰らった。

 同時に、コロモの4属性魔法が迫る。

 炎、水、風、土。四つの初級属性魔法を同時に、四方から打ち込む、コロモのユニークスキルがあるからこそできる絶技。

 属性防御すらままならない連続魔法攻撃が、魔王の肉体に面白いように命中していく。

 攻撃の嵐が去った後、白の魔王のその肉体から、彼を形成する魔力が、粒子となって飛び散る。

 絶対防御を貫いたことにより、確実に奴はダメージを蓄積させていた。

 だが、魔王は、自らの魔力を全開にし、僕を引きはがしにかかる。

 白い瘴気とでもいうべきものが風のように渦巻き、ついにアリエルとなった僕の身体が引きはがされた。


「あと、一息だったんだけど……!!」


 自分の肉体へと戻った僕は、奴の攻撃を捌くべく、再び通常の精霊憑依を敢行すると、風の防御壁を展開する。

 ダメージは与えたが、倒し切ることはできなかった。

 そして、同じ手が2度も通用はしないだろう。

 ならば、今度は、正攻法で、奴の絶対防御を貫くのみ。


「エリゼ!!」

「うん!!」


 魔王が放ってくる超絶的な威力の魔法攻撃を、僕らは、最低限の防御だけで耐え抜く。

 エリゼの全力の防御魔法と全体回復魔法を常時かけ続ける。

 その相乗効果で、辛くも、攻撃を耐え凌いだ僕らは、最後の攻撃に移る。


「アリエル!!」


 呼び声に、僕の中のアリエルが強く脈動を返した。

 同時に、天空に浮かぶオーロラまでもが、まばゆいばかりの光を放つ。

 さあ、今こそ、全ての力を、一つにする時。

 チェルが、聖剣を頭上に構えた。


「アークヴォルト!!」


 天空より飛来した雷は、人々が繋いでくれた絆の力すらも、取り込んで、チェルの聖剣へと宿る。

 そこにセシリアさんが、自らの闘気を、コロモが、魔力を込めた。

 聖剣の光が一層強くなると、同時に、圧倒的な力が魔王の魔力すらも跳ね返す、鉄壁の防御壁と化す。

 最後の仕上げとばかりに、僕は、再びアリエルへと精神を憑依させると、さらに、聖剣へとその身を捧げた。

 人々との絆。

 仲間との絆。

 全ての絆を縒り合わせ、力とした究極の覇王剣が今、誕生した。

 チェルが、一歩一歩、魔王へと歩を進める。

 携えるは歌。

 強く。強く。強く。強く。強く。

 ただひたすら強く、歌を紡ぐ。

 白の魔王はその歩みを止めようと、あらゆる攻撃手段をチェルへとぶつける。

 剣圧を飛ばし、闘気弾をぶつけ、何種類もの属性魔法が直撃する。

 しかし、それらすべてを、まるで、何事でもないかのように、受け流し、チェルはひたすらに歩き続ける。

 やがて、魔王は、自らの剣に全ての力を纏わせた。

 闘気と魔力、そして、塔の頂へと至る者を阻むという、己の誇り。

 最後の一撃だ。

 上段から振り下ろす魔王の剣。

 そして、下段から振り上げるチェルの覇王の剣。

 2つの最強の剣がぶつかり合った瞬間、世界さえも砕くかのような激しい衝撃と光が、その場を支配した。

 一瞬の静寂。

 スローモーションのように、時がゆっくりと動き出す。

 翡翠色の光が降り注ぐその中で、その光に溶けるように、魔王の身体が粒子へと還り、やがて、消えた。

「面白かった」や「続きが気になる」等、少しでも感じて下さった方は、広告下の【☆☆☆☆☆】やブックマークで応援していただけますととても励みになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ