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103.精霊術士と蒼の勇者の実力

 結論から言うと、会敵した聖塔初の魔物の群れ。

 それは、全て、蒼の勇者1人の手で始末された。

 彼の戦闘スタイルは、まさに、目にも止まらぬ、という言葉がふさわしいものだった。

 圧倒的なスピード。

 しかも、ただ、速いだけではなく、動きが止まることが一切ない。

 戦闘が開始されてから、終わるまでの間、一息も吐く暇がない。

 それほどに常時、脚を止めず、ひたすらに、敵を斬りつけ続ける。

 その暴力的なまでの高速剣技で、僕らが追い付いた頃には、すでに、彼は30匹余りの魔物の全てを片付けてしまっていた。


「ごめんごめん。あんまりにも遅かったもんだから、1人でやっちまった」


 斬り殺した大型の狼型魔物の背に座りつつ、グランが剣を納める。

 少しずつ光の粒になっていく魔物の身体から、よっと勢いをつけて、立ち上がると、彼は、再び僕の前へとやってきた。


「どうだった? 俺ってば、カッコいいだろ?」

「あ、はい……」


 正直、彼の実力を舐めていた。

 さすがに王都でも有名なパーティーのリーダーであるだけのことはある。

 単純な身体能力だけで言えば、このレイドの中でもトップかもしれない。


「蒼の勇者。勝手に飛び出すな。今回の攻略はレイドなんだ。単独行動は死に直結する」

「甘い。甘いよ。暁の。最初にも言ったが、この攻略は俺のアピールタイムだ。もたもたしてたら、全部俺が持ってくから」


 ポンとリオンの肩に手を置くと、グランはにへら、と笑った。


「安心しな。本当にヤバいときは、ちゃんと連携するさ。俺だって、それくらいの分別はある。それに、マイハニー達にも見せ場を作ってあげないとな」


 彼がそう言うと、それまで、おとなしくしていた彼の仲間の女の子達が、こくりと頷いた。

 軽薄そうに見えるが、彼は、仲間達からは相当信頼されているようだ。 


「へへっ、惚れたら、いつでも抱き着いてくれていいからさ。ハニー達も、そうやって俺についてきてくれるようになったんだ。聖塔はまだまだ長い。気長に待つさ」


 そう言うと、彼は、再び颯爽と歩き出した。

 色々、破天荒ではあるけど、少なくとも実力的には信頼できそうだ。

 まあ、あのメロキュアさんがよこした人だから、それも当然か。

 しかし、見せ場をかっさらわれたリオンとしては、おもしろくないのか、少し不服そうな顔をその背に向けていた。

 なんていうか、こうやって改めて見ると、リオンのこういうわかりやすいところって結構かわいいな。

 そんなこんなで、1層をどんどん進んでいった僕達。

 アリエルのおかげで、攻略ルートを最短で進めるし、魔物も、数こそ多いが、まだまだ弱い。

 危なげなく、進んで行くと、やがて、僕達の前には、街の中央広場にある噴水と同じくらいの、青く光る渦のようなものがグルグルと回転していた。


「これが、ゲートなんですか?」

「うん、そうだよ」


 ゲートとは、階層と階層を結ぶ階段のようなものだ。

 この光の渦に飛び込むことで、次のフロアへと移動をすることができる。

 基本的に、塔とは言いつつも、階段のようなものは存在せず、階層の移動には、もっぱらこのゲートを使うことになる。

 僕らがいるのは第1層。このゲートをくぐることで、僕らは第2層へと至ることができる。


「まだ、十分時間はあります。このまま2層の攻略と行きましょう」

「そうですね」


 カングゥさんの言葉に同意を示すと、僕は、チェルとコロモと手を繋いだ。そして、チェルはセシリアさんと、コロモはエリゼと手を繋ぐ。


「行くよ」


 そのまま、5人一緒に、渦に飛び込む。

 一瞬の浮遊感。

 前後左右がわからなくなるような不思議な感覚を経た後、僕らはいつの間には、今度は、どこまでも続くかと思うような荒野に立っていた。


「ほ、本当に環境がガラッとかわってしまうんですね」

「うん、だから、それぞれのフロアごとに、大きく対策が変わってくるんだ」


 低層域でこそ、そのまま進めるものの、中層域にもなってくると、この環境そのものが、僕達に牙を剥いてくる。

 やがては、あの苦労した天空の架橋を超えるようなレベルの悪環境もやってくるだろう。


「やはり、ゲートの位置や、ゲートから出てきた後のスタート地点は変わっていますが、基本的な環境そのものは、フロアごとに決まっているようですね」


 同じく、2層へ転移してきたカングゥさんが、確認するように呟く。

 カングゥさんやクーリエさんは、10年前に50層まで到達した経験がある。

 同じく、暁の翼のメンバーも30層まではクリア済みだ。

 その時の、各階層の攻略知識が、そのまま使えるのはありがたい。


「ゲートのある位置は、アリエルがいれば、ある程度俯瞰できます。体力を削られないうちに、できる限り進んでしまいましょう」

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