リヴァイアサン2
リヴァイアサンの声はなぜだか安堵を与える。母なる海の母性に、人間だけでなく魔族、獣ですら安心感を抱いてしまうのだ。リヴァイアサンは海を統べる竜、この世のすべての生物は海から誕生したと言われており、根源的にリヴァイアサンを母と認識してしまうのかもしれない。
「どういうことですか?」
サナは、言葉を正しながらリヴァイアサンへと質問をする。『天上に嫌われている』とはどういう意味なのか、その言葉の真意を知りたいと考えているのだ。
「神に嫌われているということだよ。君の力は神の汚点だ」
「汚点?俺の力がですか?」
「ええ、信仰の対象である神が唯一忌み嫌った能力は、今あなたが見に宿している力ですよ。神はその力を嫌い、貴方に譲渡、いや押し付けた。天上の者達は貴方の能力自体を嫌っているのです。なにせ神が自ら不要とした力なのですから」
サナの力は、そして不運な人生は、全て神の身勝手で起こされたことだったのだ。サナは改めて天上を恨んだ。神の身勝手で呪いのような力を装備することになったのだ。神を殺すことは決定事項だったが、そこにサナの私怨も込められ、より一層強い目標となった。
「それで、なぜそれを俺に教えてくれるのですか?」
一瞬だけ我を忘れそうになったが、今は目の前の天災を相手にしなければならない。それにわざわざこの事実を伝えたと言うことは、何か意図がある。サナはその意図を汲み取ることが出来ず、直接リヴァイアサンに聞くことにした。
「我々も神の存在が不愉快でならないのですよ。しかし、天上と我々には不可侵の契りがある。神の方は時折異世界人を飛ばして、我々にちょっかいを出してきますがね。ですからサナ、貴方には神を討ってもらいたいのです」
リヴァイアサンのいう我々とは、恐らく陸神竜ヤマタノオロチ、空神竜バハムートのことだろう。規模が大きすぎて話がうまく入ってこない。神と竜の対立、不可侵の契り、なんとも奇々怪々な物語だ。だがその発言を行ったのは、目の前にいる伝説だ、納得するしかない。
「分かりました。ですが、後一つだけ質問してもよろしいでしょうか」
「構いません」
「あなた方の目的は何なのでしょうか、神が消えた後、あなた方は一体何を行うつもりなのでしょうか?」
サナは警戒していた。神を討ったとしても目の前の怪物は人間に仇名す存在かもしれない。そこだけは、ハッキリとさせなければならないだろう。
「目的などありませんよ。我々の世界に不躾に関わる神が目障りなだけです。この世界は我々が創造したものです。奴に好き勝手されるのが気に食わない、ただそれだけです。」
どうやら目の前の竜は、人間に危害を加える気はないらしい。伝承にある通り、ただ世界を回遊することだけを目指しているようだ。彼らの力は強大過ぎるが故に、時折人間を傷つける。しかしそれは自然と呼ばれるものだ。海はリヴァイアサンがいることで生命が存在できる。陸ではヤマタノオロチがいることで星が回り、昼夜が起こる。空にバハムートがいることで雲が生まれ、雨や雪、様々な恵みを落とす。彼らは時折天災を起こすが、それも破壊と創造という、世界の循環作業を行っているにすぎない。生物の営みを永続的に守るための犠牲だ。これを止めることは世界の破壊につながる。サナは、神竜の存在に共感を持った。自身が嫌われようとも、世界を守りたい、サナの行いが正義かどうかは分からないが、世界を守りたいと言う思想自体は神竜たちと同じなのだ。




