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臧否の禍時   作者: まるサンカク四角
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リヴァイアサン

航海にでて三日目の昼、海は大いに荒れていた。空は晴天、風もなだらかに吹き抜ける中、海だけが大荒れを起こしている理由など一つしかないだろう。近くに海神竜リヴァイアサンがいると言うことだ。並大抵の船では一波で転覆してしまうだろう、そんな海で小舟が無事な理由には、スペチアーレの魔法補助がある。


「スペチアーレ!まだ船は持ちそうか!?」

「ええ!波自体は耐えれるわ!」


‘波自体は’、スペチアーレの発言に続く言葉はある程度予測できる。この異常な波を引き起こしている存在と対峙した場合、どうすることも出来ないということだ。サナもそのことは重々承知している。


「分かってる!もし遭遇したときはすぐに転移門を繋いでくれ!」


背に腹は代えられない、ここで死んでしまえば目的の達成は出来ない。予定を延期させてでも待避するのがセオリーだろう。納得しているスペチアーレは、サナの言葉に返事を返そうとした。だが、それは不発におわる。


急に波が動きを止めたのだ。先ほどまでの高波は、見る影もない。船の揺れも、もうほとんどとしてない、もしかしたらリヴァイアサンはもう近くにいないのかもしれない。そう思っていたスペチアーレだが、サナの声で再度緊張感を持つ。


「下を見てみろ、ここら一体薄暗くないか」

「えっ・・・」


空は先ほども述べた通り、晴天である。海に影が落ちている理由は浮雲ではない。だとしたら、この影はどこからきているのか。空でなく、海底からの影、何人も太刀打ちできない存在が今真下にいる。サナとスペチアーレに出来ることは息を潜めて、下の化け物が通り過ぎるのを待つだけだ。


影はゆっくりとだが進んでいる。幸いサナたちの乗る船は小舟であったため、気づかれていない可能性も大いにある。影は徐々に小舟の下から遠のいて行く。やがて影が真下から完全に過ぎ去った時、少し遠方で波が隆起していくのが見えた。水が徐々に海水へと帰っていき、浮き出た物体が明らかになっていく。頭だ、竜の頭が見えた。この距離でこれほど大きく顔が見えると言うことは、この化け物の体長は2.3キロメートルを下らないだろう。いやそれより問題なのは、目の前の神に自分たちの存在を気づかれていたということだ。もたげた首はどんどんと小舟に向かってくる。サナたちを目指して進んでくるのは疑いようがない。


「こっちに向かってきてるよね?」


スペチアーレは転移の準備を進めながらサナに聞く。だがサナは動かない。目の前の神話と目を合わせて逸らそうとしないのだ。


「わざわざ俺たちを過ぎ去ってから現れた。攻撃する意志はないかもしれない」


サナの言葉も最もだ。今このタイミングで現れたということは、危害を加えるつもりはないと考えるのが筋だ。だが相手は伝承に残る怪物、一般概念が付け入る隙などない存在だ。警戒は最大に、それでいて冷静に対応しなければならない。


「転移はすぐできるように準備しておいてくれ」


サナは顔を一切動かさずにスペチアーレに指示をだした。リヴァイアサンとの距離はもう目と鼻の先だ、こちらから刺激することだけは避けなければならない。サナは相手の動きをまった。


「君は天上に嫌われているな」


リヴァイアサンは、底冷えするような、それでいて澄みきった海のような声だった。


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