仲間
サナは、金鶴、蓮、そしてエリーに手を振られながら大海原へと船を出した。航海術といえるほどの優れた技術は持っていないが、帆の操り方はある程度把握しているサナは、順調に航路を進んでいく。波は一定の速さで訪れており、付近にリヴァイアサンがいないことを教えてくれる。
「こうやって大勢に見送られるのも久しぶりだな」
「・・・」
サナから漏れ出た独白に、スペチアーレは黙りこくっていた。サナにとっては、たった数人に見送られるという行為ですら、物珍しいことなのか。いやそれよりも、たった3人の送り人を大勢と言ってしまうところに人生の哀愁を漂わせている。
「サナは、もっと仲間が欲しい?」
スペチアーレは、サナの心情をより知りたいと思った。大人びていて、会った当初はとてもいけすかない奴だと思っていた。でも、深く関われば、やはり年齢に見合った拙さも見えてくる。一人を好み、他者を拒絶しているように見えていたサナも、友や仲間の存在を求めている気がしてならないのだ。
「いや、欲しいと思ったことはない。でもいつの間にか、金鶴や銀鶴、蓮、そしてスペチアーレ、お前らが付いてきてくれた。欲しいと思ったことはないが、お前らとこういう関係に成れておれは良かったと思う・・・」
サナの心からの言葉かは分からないが、スペチアーレにとってこれ以上欲しい言葉はない。既に見えなくなっている海岸の者達も、きっと両手を上げて喜ぶような言葉だ。
「そう、、ならいいわ」
頬が緩み切った顔で、発言だけは気丈に振舞った。そのちぐはぐな姿は、やはりスペチアーレも経験が浅い子どもであると証明していた。少し、白けた空気は沈黙を創り出したが、二人にとって沈黙は悪ではない。むしろ、この空気ですら居心地の悪さを感じていないのは、二人の関係がより親密になったことを表していた。
―――――海岸―――――
「さ~て、俺たちも戻りますか~」
蓮は大きく伸びをしながら、気だるげに言葉を発した。サナの見送りも終わって暇をしているのが分かる。
「なに言ってるのよ、あんたはアシハラの国王代理としてさっさと働きに行きなさい」
「え~、嫌だよ~、次期国王をさっさと立てればいいじゃん」
金鶴に小言を言われるが、蓮は嫌そうな顔をしている。本当に嫌なわけではないが、様式美としてこのやり取りを行っているだけだ。金鶴もそれが分かっているのか、あまり口調を変えずに反論する。
「いいからいく。国民から信用されてる貴方じゃないとアシハラを操れないでしょ」
「う~ん、救世主なんて役あるんじゃなかったな~」
蓮は愚痴を漏らしながらも、アシハラに行く気になったようだ。金鶴にアシハラ城までの転移門を創り出してもらっている。ほどなくして、城と繋がった門が出現し、蓮は吸い込まれたかのようにぬるりと消えていった。
「馬鹿も仕事に戻ったことだし、エリー、戻るわよ。新しい御家へ」
金鶴は、エリーの手を引きながら北の魔王城へと続く転移門をくぐっていく。エリーにとっての新しい家、そして大切な仲間が集まる家、親しみと愛しさに溢れている、まるで天国のような魔王城へと二人は帰っていった。




