再会
伝承にある通り、この世界の海には、神にも劣らぬ化け物が存在するのだ。転移魔法が発明されるまで、大陸間の交易はほとんどとしてない。いや、それすらも正確ではない。転移魔法が使える現在でも、交易は少ない。転移をするためには移動先に陣を描かなくてはならないのだ。大陸横断を果たし、陣を描いた者は複数存在するが、転移門は高額な使用料を伴う。命懸けで開拓したのだ、当然と言えば当然であろう。
「波も落ち着いているし、そろそろ行きましょう」
晴天、波は穏やか。出向には最適だろう。
「あぁ」
サナは軽く返す。一度はこの海を体験しているサナであっても、緊張する。
二人は、小舟に荷物を載せ、出向の準備を進める。後は船に乗り込むだけで海に出ることが出来る。だが、一つの声が二人の出向を止めた。
『おーい、ちょっとタンマ~』
この抜けた言葉遣いは一人しかいない。蓮の声だ。
サナの背中が光りだす。サナの裸体には陣が彫られている。背中に描かれた光は転移を示すものだ。光は煌々とし、遂に転移門がつながった。
「いつまでたっても慣れないな」
サナは不機嫌そうな表情をしながらぼやく。
「しょうがないでしょ。これが一番手っ取り早いんだから」
金鶴の声も聞こえてきた。彼女が転移門をつないでくれたのだろう。
「それで、何の用だ?わざわざ俺の陣を使って転移してくるぐらいだ。これでくだらない用だったら、蓮を半殺しにするぞ」
物騒な言葉が飛ぶが、蓮はにっこりとした表情をしている。
「見てたらわかるよ~。ほら、おいで~」
未だ開き続ける転移門に蓮は呼びかける。中から何かが出てくる気配がする。幼い手足、光輝く金色の髪、サド村で遭遇した女の子、エリーだった。
サナの表情がより一層険しくなる。
「蓮、お前どういうつもりだ」




