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臧否の禍時   作者: まるサンカク四角
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門出は二人ぼっち

「話は終わったのか?」


サナは思いのほか早くスペチアーレが戻ってきたことに驚いていた。ここがサナにとっての誤算だったようだ。金鶴の魔法で、愛情と憎しみ以外を失っているとはいえ、家族への愛はどこかに残っていると思っていた。だが、時間と表情を考えるとその情すら消え失せていたことが分かってしまう。後悔は何度も押し寄せ引くことがない。自身のことを犠牲に人々を守ろうと、平和な世界を目指すサナは基本的に他者を不幸にすることを嫌う。自身のエゴでスペチアーレを不幸にしているという自覚が辛かった。


「サナ、早く出ましょう」


スペチアーレはサナに促す。思い残すことはないと表情が語っている。


「あぁ」


サナはもう空返事を返す事しかできない。不幸に包まれた空間だ。


「サナ前も言ったわよ、気にしないで。貴方の方が私より辛いはずよ」


二人は支え合っている。お互いの辛さを共有することはできない、それでも相手を思う気持ちだけで支え合うことが出来ている。


二人は混濁した感情を持ちながらも歩みを止めない。その先に希望が残っていることを願って。


東の大陸、最西端の地。目の前には大海が広がる、死の淵と言われる場所だ。西の大陸、南の大陸、北の大陸に行くにはここを通るしかない。サナは一度この海を渡り、北の大陸に渡った。転移門を北の魔王城に用意してからは容易に北の大陸に行くことが出来るようになったが、他大陸に行くためにはこの二つを通るしかない。


「遭遇したくないわね」


スペチアーレが呟く。勇者一行になるまでアシハラ国から出たことが無かったスペチアーレですらも知っている神話。大海の覇者、海神竜リヴァイアサンの荒海伝説。世界の海を統べる竜であり、戦闘能力は神と同等とすら言われる本物の怪物だ。常に回遊する習性を持っており、遭遇したすべての物を破壊する災害だ。ただ恩恵もある、リヴァイアサンが泳ぐことで、潮の流れが起こり、生物の生活が循環するのだ。


「今の俺たちでは手も足も出ないだろうからな」


魔王を単身で屠ったサナですら、緊張の表情をしている。それだけの強者がいる海に出なければいけないのだ。二人は死の淵から船をだす、凡そ一週間の航路、海神竜に会わないことをただ願うしかできない。


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