刀と鎧
滞在一日目
サナは、武具屋の前に立っていた。宝剣を所持しているが、予備を用意しておく事は大事なことである。扉を開き店の中に入っていく。
「いらっしゃい!今日はどんな物をお求めで!」
店主であろう中年の男性がハキハキと声を上げた。髪の毛を綺麗に剃りあげ、ピカピカと輝く頭に、増え始めた頃だろう、薄らと確認できる少しのシワ。かなり強面の男性ではあるが、放つ雰囲気は柔らかく、人良さを感じさせる。
「早速ですまないが、剣と鎧を試用してもいいか」
「もちろんですよ!お客さん!裏に試し斬り用の人形があるが使うかい?」
「使わせてもらう」
「それじゃあ、気になる剣を選んで下さい!」
サナは、並べてある剣に目線を滑らせていく。そして、絶え間なく動いていた目線を一つの剣でピタリととめた。使う剣を決めたようだ。サナは、その剣を持ち、店主に裏に連れて行くように頼んだ。
「その剣はあんまりオススメできませんよ、お客さん。そいつは、ここいらのオーガを纏めていた鬼王が持っていた刀で、切れ味は一級だが、かなりの邪気が渦巻いてるんですよ」
「中々の刀だとは思っていたが、鬼王の刀だったのか。益々使いたくなった」
「お客さんがいいならいいんすがね。使う時は、邪気に取り込まれないように、気をしっかり持ってくださいね」
日本刀のように緩やかに曲線を描く刃、刀身は禍々しく、赤黒さが鈍く揺らめくように煌めいている。柄は、全てを飲み込むような漆黒に彩られ、魔のモノを彷彿とされる。
「気になっていたことがあるんたが、鬼王といえば、上位魔族だろう。どうやって倒したんだ」
「私は直接見てないんですが、聞いた話では、鬼王の部下達が狩りに出ている間に、鬼王とその側近達を、討人達が総出で討伐したらしいですよ」
サナは、この村の討人達に改めて感心した。数で挑んだとはいえ上位魔族を倒すなど、並の強さではできないことだ。討人達は日々、鍛錬を積み重ねているのだろう。
そんな事を思いながら、サナは試し斬りの準備をしていた。
刀を抜かず、所謂、抜刀の構えをするサナ。滑らせるように刀を抜き、人形を一刀両断する。その速度は、刹那の一瞬、並の人では目視することすら不可能な、瞬足の一刀。
「使い心地も悪くない。これを売ってくれ」
「毎度あり!鎧はどれを試ますか」
「一番防御力が高いのを適当に見繕ってくれ」
「それなら、妖鉱石で作ったこの鎧ですね」
サナは、刀と鎧を買い、武具屋を出ていった。刀を二本挿し、鎧を身につけて歩くその姿は、立派な勇者にみえた。