無感情
「こんな感じで仲良くなって、王の断罪に至ったってわけよ~」
蓮はアシハラでの活動を語った。
「待ちなさい、貴方勇者も一緒に酷評したの?」
語られた話の中で、勇者の行いも悪いように説明していた。
「ちょっと脚色しただけだよ~実際サナ以前の勇者は皆そうだったらしいし」
蓮は国王の情報とともに歴代の勇者たちについても調査していた。その結果からわかったことは、どの時代の勇者も屑だったという事だった。
「それにこれはサナの望みでもあるんだよ」
「分かってるわよ。でも好きな人が私達以外に貶されているのが辛いのよ」
好意を隠すことが無くなったスペチアーレは、本音を曝け出す。頭では理解しているのだ。嫌われる事がサナの望むことであり、重要なことだと。だが、心が、感情が、突発的に出てくる。
「スペチアーレ、気持ちはわかるが飲み込んでくれ」
サナからのお願いにスペチアーレが逆らえるはずがない。しぶしぶではあるが、納得し言葉を一時は飲み込んだ。だが、以前から燻っていた疑問が出る。
「蓮、貴方はなぜサナの近くに居れるの?貴方はサナに対して恨みをもつ理由はないじゃない」
金鶴、銀鶴のように肉親を殺されたわけでもなく、スペチアーレのように守るべき国民を殺されたわけでもない。にも関わらず、蓮はサナの傍に居続けられる、不思議なことだ。
「俺は特殊なんだよ、育った環境が感情を殺させた。今ある感情もすべてが復元されたもの、当然好意をデリートさせることも可能なんだ」
サナの周りには歪んだ者しかいなかったようだ。皆、感情、環境、過去が、後天的に心を歪ませた。サナも例外なく歪んでいる。
「真剣な話になるとつい、弁口が狂うな~今のは忘れてよ~」
蓮は口調を戻し、普段の口調に変えた。蓮のオーラ、口調、表情、全てがどこか作り物であるとサナたちには理解できてしまった。先ほどの話を聞いたからかもしれないが、恐らく蓮のすべては消去されたものを取捨選択し復元したものなのだろう。
「それでサナ~、これから王の処刑が始まるんだけど、その後は・・・」
「言わなくても分かってる。俺たちは東の大陸を追放するんだろ?」
望んだとおりの結果だった。サナは次なる魔王を倒すべく元々大陸を離れるつもりだった。だが、魔王を倒した勇者としてではなく、国民を守れなかった無力な勇者として称号を得たかったのだ。
人々は自ら怒る、されど踊らされている。気づくことなく踊り続ける人々、東の大陸すべてを支配しているのは、怒りの矛先を向けている相手であると言うことを知らない。大陸には、滑稽で善良な人々だけが残されていた。




