サド村到着
旅を始めて2日目にして、上位悪魔との対面、そして
死闘。畢竟、サナの圧勝で終わったが、並の勇者であれば、既にその一生の幕を下ろしていただろう。それ程の敵に遭遇するのは、意図的でない限り中々起こらない。その後、サド村まで、中位悪魔以上の魔族と遭遇することなく到着した。
「ここがサド村か、アシハラ壁内の農村より遥かに栄えているな」
サナが感嘆の声を上げた。
サド村、アシハラ壁内に入ることを許されていない人々だけで作り上げた村ではあるが、人口は10万人を超え、壁内の人々と比べても遜色がない程に高い生活水準を誇っている。
「当然だろう、サド村は壁外最大の村なのだ。ここには、壁内では手に入らない物も多くあるのだよ。」
フォードは村の説明をしつつ、サナが知識不足、経験不足であるという事を遠回しに貶めた。サナはそのことに気付いていたが、無反応を突き通していた。反応すれば、相手の思う壺だと分かっていたからだろう。だか、フォードの意図を理解できず、一人、高揚を抑えられないでいる者がいた。スペチアーレ、彼女は初めて見る物に目を輝かせていた。
「オーガの角に、オークの蹄、他にも壁内じゃ滅多に見られない物がいっぱいあるわね!」
「壁内にある珍しい商品は、サド村から輸入した物が殆どだからね。壁内の人々にとっては珍しい物も、ここでは日常に溢れたものであることも多いのだよ」
サド村は、人口の多さ故に、職種も多岐にわたるが、殆どの仕事は、大きく分けて五つに分類される。農業、商業、工業、そして守業に討業である。守業とは、モンスターから村人を守る仕事であり、主に村内で、見張り、モンスターの撃退・討伐などをする。逆に討業は、村外を主な場としており、モンスターを捕獲・討伐、素材の採取をする。
サド村に高価な商品が多い理由は、討業を生業とする人々に関係がある。
壁内で高値をつけられるには、希少であることが第一条件であり、モンスターがいない壁内では、ゴブリンの皮やスライムの破片ですら、中々の値がつく。中位悪魔であるオークやオーガの商品であれば、数倍の稀少価値が付くのは想像に難くないだろう。
更に、鉱石や植物。壁外には未開の地が多く、壁内では希少なものもので溢れている。
これらを集めるのは、全て討業を行う人々、討人なのだ。
「この村にいる間は、各自で行動するぞ。三日後に村の正門に集合でいいな」
「私はそれでいいわ」
「俺も同意見だ」
ここには、品質の良い装備、薬などが多くある。勇者はここで万全な準備を整え、これからの本格的な冒険に打って出るのだ。
だが、今はまだ、誰も知らない。この村に、東の災害と呼ばれる悪魔が近づいてきていることを……。