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臧否の禍時   作者: まるサンカク四角
69/102

役割

「それよりも、その男は誰よ」


スペチアーレは先ほどから気になっていた男の説明を求めた。サナが説明しようと口を僅かに開けたが、男の声の方がほんの僅か早く届いた。


「俺っちは小鳥遊蓮、サナに討伐された高潔の使徒だよ~」


またもや意味不明の言葉だ。討伐されたのなら生きているはずがない、第一にサナは国王に高潔の使徒の首を献上したことで、宝鎧を賜ったのだ。目の前の男が高潔の使徒であるはずがないと、頭ではわかっているが、場の雰囲気が、目の前の男の表情が、蓮の言葉を疑いを許さない。


「わざわざ分かりづらい言葉を使うな・・・」


サナは話がいちいち停滞するのを危惧し、蓮に注意をする。


「ごめんって~。分かりやすく話すよ~、俺不死身、サナ勧誘、魔王幹部」


分かりやすくとは言ったが、片言で話されるのは少々気に障る。サナは頭を抱えたが、確かにわかりやすく伝えていたので敢えて口は出さなかった。


「えーと、つまりあなたは不死身で国王に渡した首は、本物ってことかしら。そしてサナに勧誘されて幹部になったと・・・」

「せいかい!」


何とも砕けた会話だった。サナや金鶴、銀鶴に蓮、皆魔王軍のトップとは思えない立ち振る舞いだった。


「ふふふふ、そう、分かったわ」


毒気を抜かれたスペチアーレは、思わず笑みをこぼす。


和気藹々とした空気はいつまでも続かない。東の魔王ドラークを倒した以上、東の魔界の統治に人間界の統治、それらの問題を解決しなければならないのだ。サナがこれからの方針について切り出す。


「自己紹介も済んだことだし、これからの方針を決めるぞ」

「はいはーい!アシハラのことは俺っちに任せて~」

「当たり前だ、その為にお前を壁外の村で活動させてたんだからな」


蓮の壁外での活動、つまり、サナたちより先に村を廻り、悪魔達を討伐すること。これには、壁外の村人たちを守ることと勇者の意義を曖昧にすること、そしてアシハラ壁内の人々のイメージを向上させることにあった。


「蓮さんって、もしかしてあの蓮さん?」


「あの蓮さん」とは、サナたちがムーキ村、キム村を訪れた際に、先行して村を救っていた男の名前だ。


「ああ、そうだよ。言ったろ、頼ることは大事だと、あいつは死なないと・・・」

「そんなの分かるわけないでしょ」


サナが言っていることは蓮という男を理解している者からすれば簡単な理屈だが、蓮が不死身であること、実力を知らないものからしたら到底理解できるものではない。


「俺っちはその後、他の村も点々と回ってたんだよ~」


蓮はサナたちが修行をしている間も、他の村々を救って回っていたようだ。


「これで、蓮の信頼は厚くなった、王を引きずり下ろし、アシハラを統治させる」


小鳥遊蓮という高潔の使徒、そのイレギュラーな存在を計画に組み込み即座に実行していた。アシハラ統治における第一歩はもう歩まれていたのだ。


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