表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
臧否の禍時   作者: まるサンカク四角
68/102

調和

「方針は決まったようだし、取り敢えずあなたに魔法を掛けさせてもらうね」


金鶴はスペチアーレに向かって可愛らしく、あざとく言い放った。


「へ?」


スペチアーレは素っ頓狂な声を上げたが、金鶴はそんな反応を無視して魔法を放った。金鶴の掌で生成された黒いモヤは、スペチアーレの心臓目掛けて進み、胸に触れるとゆっくりと吸収されていった。


「なに?この魔法・・・」


スペチアーレは自身になんの変化もないことで、疑問が深まる。


「直にわかるよ」


金鶴が言った途端、スペチアーレの中で、憎悪が渦巻いた。サナがとてつもなく憎い存在となっていくのが分かる。


『これが手伝うってこと・・・こんな憎悪の中サナを愛し続けられるの?』


スペチアーレは、苦しんでいる。身を焦がすほどの憎悪を抑えこまんと、内部で感情が戦っているのだ。だが、恨みの勢いは止まらない、身の内にある感情のすべてが、徐々に染められていく。


『このままじゃ・・・わ、た、し』


スペチアーレは、自身の状態に焦っていたが、外から聞こえる金鶴と銀鶴の声が聞こえてきた。


「落ち着いて、自身の愛を感じなさい」

「愛を見つけ出して」


二人の言葉を受け取り、スペチアーレは憎悪の渦の中、サナに対する愛情を探り始める。微かに感じる温かい雰囲気、その出所を辿れば見つけられると直感し、集中した。手を伸ばせば、何かに触れた。触れたナニカはスペチアーレをゆっくりと包み、憎悪の波から守った。


「はぁ、はぁ、はぁ・・・」

「どうやら成功したようね、これで貴方は傍に居ることができるわ」


スペチアーレの感情は、狭く深い愛情と、広く浅い憎悪で染められた。それ以外の感情がさっぱりと消えている。この感情は人として欠陥だが、後悔はなかった。


「感謝はするけど、乱暴なのよ」


スペチアーレは、金鶴に軽口をいった。


「成功したんだからいいでしょ。それじゃサナを呼び戻してくるわね」


金鶴はサナが出ていった部屋に向かっていった。金鶴とサナの声、そしてもう一人聞いたことない男性の声が聞こえてきた。スペチアーレは不思議に思っていたが、今は何もする気が起きない、サナたちが入ってくるのを黙って待っていた。


「お~、無事に成功したみたいだね~」


入ってきたのはサナと金鶴、そして蓮だった。スペチアーレにとっては初対面だったが、蓮はフランクに話しかけてきた。


「こうなったか・・・・」


サナは悲しそうな、うれしそうな顔をしている。前例として金鶴、銀鶴の内部闘争をみていたサナにとって、今スペチアーレが持っている感情は良い物とはいえないことを知っている。それでも、スペチアーレを殺さずに済んだことにうれしさを持っているのだ。サナのスキルは、本人も他人も不幸にしている・・・・


「気にしないで、私が決めたことよ」


スペチアーレは、サナの感情を見透かしたように答えた。その言葉はサナにとって心の救いとなった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ