金鶴、銀鶴
「魔王、そして勇者、二つの顔を使って、表裏から世界をまとめ上げる。スペチアーレ、お前はこれからどうする?」
サナの問いの意味は、簡単に理解できる。邪魔をするなら消す、と言うことだ。
「私は、たぶん貴方のことが好きなのだと思うわ、でも、貴方の考えにはまだ納得がいっていないの・・・・」
スペチアーレは己の好意をサナに伝えた上で、サナの考えに完全に納得できていないことを伝えた。
「・・・・それじゃあダメだ、俺に好意を持つ奴は邪魔でしかない」
スペチアーレは悲しみの表情を浮かべた。サナに真っ向から好意を否定されたのだ。サナの固有スキルをスペチアーレは知らない、サナが苦しみながらもスペチアーレの好意を切り捨てたことを知らないのだ。
そんな時、二つの影がサナに飛び掛かった。金鶴と銀鶴だ。
「サナ~、話が長いよ~」
「うん、長いと思う。私達にもっと構うべきだと思う」
金鶴はハツラツとした口調でサナに喋りかけ、銀鶴は落ち着いた口調で構ってほしいという意思を伝えた。二人がサナに対して好意を抱いているのは、明らかだった。
「サナ、私の気持ちは蔑ろにするのに、その悪魔達の気持ちは切り捨てないのね・・・」
サナは、スペチアーレに対して好意は邪魔と言い放ったにも関わらず、今は金鶴と銀鶴の好意を受け止めている。スペチアーレは、それに対して大きなモヤモヤが立ち込めているのだ。
「サナ~少し席を外してくれない?」
「何かするつもりじゃないだろうな?」
金鶴はサナに席を外してもらうようにお願いしたが、サナは金鶴がスペチアーレに何かをするつもりじゃないかと疑いの目を向ける。
「大丈夫、サナの嫌がることはしない」
銀鶴がサナの質問に返した。それを聞いてサナは面倒臭そうに部屋の外に出た。これで玉座の間にいるのは、金鶴、銀鶴、スペチアーレの3人だけだ。
「スペチアーレと言ったわね、サナの固有スキルを知ってる?」
金鶴はスペチアーレに質問をする。サナの固有スキル「嫌われ者」について知っていなければ話が始まらないからだ。
「知らないわ・・・」
スペチアーレは、質問の意味を誤解した。二人の悪魔と自分、サナとの関係の深さを見せつけられていると感じたのだ。だがそれを金鶴はすぐに否定する。
「勘違いしないで、これからの話に必要だから聞いただけよ」
これからの話、十中八九、サナが他人の好意を好まない理由だろう。スペチアーレは身を乗り出して金鶴の言葉を待つ。
「サナの固有スキルの名は「嫌われ者」、人に嫌われれば強くなり、人に好かれれば弱体化する能力よ。ただこの能力、人に好かれればかなりの倍率で弱くなるの、だからサナは目的のために人から好かれることを極端に避けているのよ」
スペチアーレは、今までのサナの態度や行動の理由を知った。そして疑問に思った。目の前の二人は明らかにサナに好意を持っている。にも関わらずサナはそれを許容しているのだ。やはり私とは違う扱いをされているのだと考え至り、悲しくなる。
「話を最後まで聞かないで落ち込まないでよ。貴方と私たちに対するサナの感情は、対して変わらないわよ」
「うそよ・・・あなたたちのことは傍に置いているのに、私は拒絶されたわ・・・」
スペチアーレの気分は上がらない。金鶴はため息を吐いた後、言葉をつづけた。
「確かに、私達はサナを愛している、でもそれに負けないほど彼を憎んでいるのよ・・・」




