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臧否の禍時   作者: まるサンカク四角
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フォードの最期2

「喜んでるとこと悪いけど、まだ終わってないよ~」


蓮の頭は元通りになっていた。地面に飛び散った肉片は未だ残っている。再生というよりも構成に近い能力のようだ。


「貴様不死身か!」


フォードは見たことない能力に驚愕している。それと同時に、リッパ―討伐のトリックが分かった。


「頭だけ切り落とし、王に献上したのか・・・」

「お、冷静さを取り戻して考えが回るようになったな。その通りだ」


フォードは、冷静になっていた。人間と言うのは、幸福から絶望に変った時、非常に冷静になるようだ。意味のない考えを巡らせる、死は免れないというのに、なんとも無駄な能力だろうか。


「サナからの命令であんたを殺すことは絶対だ。諦めて首を差し出せ」


蓮もおしゃべりに飽きてきたようだ。攻撃の構えを取る。どの武術にも当てはまらない独特の構えだった。蓮が転生前に編み出した我流の型、それに改良を加えたものだ。


到底人間とも思えぬ速度で攻撃を繰り出す蓮、この世界に転生してからレベル上昇の恩恵を受けていたようだ。戦場で会得していた技術に、レベルによるステータスの上昇が合わさり、強さがかなり上がっている。


蓮の腕がフォードの反撃によりぐにゃりと曲がる。しかし蓮は痛みなど感じていないように追撃する。いや実際痛みを感じていないのだ。死の無い生命に痛みは不要だ。防衛本能も痛みも怒らない、何をされようとも死ぬことはないのだから。


「くそっ!なんなのだ、この男は!」


傷をどれだけ与えようとも怯まない、死を恐れない者とはこれほどまでに恐ろしいのか、フォードが抱いている感情とはまさにこれだった。恐怖は動きを鈍らせ、思考を妨げる。マガトキ村で克服したはずの恐怖心が蘇ってくる。


「スキあり!」


フォードの右腕が地に落ちた。利き手である右腕を失ったことで、フォードの敗北はより濃厚となった。


「残念だったな、お前はサナの慈悲を無駄にした」

「慈悲だと・・・一体なんのことだ!」


蓮が言った『慈悲』と言う言葉の真意が理解できない。


「サナがなぜお前をすぐに殺さなかったか分かるか?お前が考えを改めることを待っていたんだよ」

「考えを改めるとはなんだ!」

「それは自分で考えな、もう一人の嬢ちゃんは合格したようだぞ」


フォードは自分の何が悪かったのか、分からない。他人を自分のために利用するだけのフォードにとって、滅私奉公の精神など思いつきもしないのだ。


「あの世で、考え続けな~」


飛来してくる拳がスローで再生される。だが走馬灯は一切見えない。向かってくる拳を見つめながら、意識を過去の記憶に巡らせることは出来ない。死を待つだけのこのゆっくりとした時間は、フォードにとって地獄のようだった。


「任務完了っと、もしもしサナ~。男はちゃんと殺しといたよ~」


蓮はフォードの殺害を終えると、サナに連絡をする。こうして、フォードの死は呆気なく訪れていた。


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