フォードの最期
「お、お前は・・・」
サナが消えた守護の間、上位悪魔と最上位悪魔フェニックスVSフォード。フォードに勝ち目などないだろう。だが、フォードが驚愕している理由はその状況にではない、目の前に現れた男が、ある人物との情報と一致しているからだ。
「白き髪に紅き瞳、貴様ムーン・ザ・リッパーか!」
フェニックスから魔力を多く全くとして感じないこと、姿が情報と一致していることから、フォードは目の前の男にそう聞いたのだ。
「そういうことを大声で言っちゃダメだよ~。君たち、先に帰ってて」
フェニックスは、生き残っていた上位悪魔に帰還の命令を出した。だが、上位悪魔達はうごこうとしない。前代の北の魔王時代から仕えてきた悪魔たちは、新参幹部を良く思っていないのだ。
「うーん、言葉で言ってもダメか~」
そういうと、フェニックスは最前列にいた上位悪魔の首を吹き飛ばした。半秒遅れて悪魔達は、仲間が死んだことに気づく。
「僕は新参だけど、魔王様に実力を認められたから幹部の座に就いたんだよ~。あんま舐めてっと殺すぞ・・・」
フェニックスの語気が荒れる。悪魔達は初めてフェニックスの力を認識したようだ。顔を青ざめている。自身たちの行動を後悔し始めているのだ。
「まだ、ここに残る~?」
悪魔達は急いで転移門で帰還していった。なぜか仲間から敗走する形・・・
「さて、僕がリッパ―かどうかについてだけど・・・・だ~いせ~か~い」
フェニックスは本当にリッパ―、いや小鳥遊蓮のようだ。
「貴様は、サナ君に殺されたはずだ!どうなっている!」
「どうなっているって、さっきもいったじゃん、実力を認められたから幹部の座をもらったって」
フォードは、自身が聞いていたことに対して答えになっていない蓮にいら立つ。
「そんなこと聞いていない、なぜお前が生きているのかと聞いているんだ!」
「だから~魔王様、つまりサナに魅入られて助けられたんだって~」
「っっっ!!!」
寝耳に水どころか、寝耳に硫酸を掛けられたような衝撃だった。
「ははは、今頃ドラークもそんな顔してるんだろうな~」
フォードには、今の一言で理解した。俺も魔王ドラークもサナの掌の上で遊ばれていたんだと・・・
「俺は死ぬしかないってことか・・・・」
「オレっちを倒せたら、死なずに済むよ~。部下も全員帰らせたし~」
フォードは一つの光明をみた。目の前の男からは魔力を感じない、更には人間だ。武闘家としての力を確固としたフォードには、蓮一人だけなら勝てるかもしれない。そう思ってしまったのだ。
「そうか、そうか!部下を帰らせたのは間違いだったな!」
先ほど上位悪魔の首をいとも簡単に吹き飛ばした蓮の実力をもう忘れている。フォードの中の焦りや緊張が、まともな思考を妨げてしまっている。
「あらら、変に希望を与えちゃったかな~」
蓮は、発言とは反対に、何も感じていない表情をしていた。フォードは、そんな蓮に向かって攻撃を繰り出した。レベル90越えの武闘家の拳は、蓮の首を破裂させた。飛び散る脳髄に砕けた頭蓋骨、血飛沫が床にこびりついていた。
「私は生き残た!生き残ったんだー!!ざまぁみろ!調子づいて一人で私と戦ったことが仇となったな!」
頭を失い、地に伏している蓮を見下ろしながら、フォードは生の喜びを噛みしめていた。死の緊張と生の喜び、アドレナリンが止めどなく溢れ、多幸感に包まれていた。




