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臧否の禍時   作者: まるサンカク四角
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北の魔王

グレート・サタン、現北の魔王であり、前北の魔王を殺すことで魔王の座についた者の名だ。その姿を見たという者は、他魔王含めておらず、謎に包まれた魔王であった。その正体が勇者、驚くべき事実だ。


「どいうことだ、貴様がグレート・サタンだと」


ドラークはサナの言葉に意識を覚醒させる。深まる謎が多いのだ。サナを殺すため助言をくれた、サナを殺すために兵を貸してくれた、そんな北の魔王が目の前にいるサナであることを信じられないのだ。


「おかしいと思わないか?ここで一か月も待機させられたこと、今の連絡を無視されたことを」


確かによくよく考えればおかしなことだ。勇者のレベルが上がる前に一斉に攻める方が効率はいいし、突然の連絡遮断、不自然である。


「俺は狡い男なんだよ」


サナの狡猾な部分が今明らかになっている。最初から仕組まれていた戦争だった。ドラークでさえ、サナの目的のための役者に過ぎなかったのだ。


悔しそうな顔をしながら、サナを睨みつけるドラーク。信じ、感謝すらした存在に裏切られていた、それも最初からだ。ドラークの悔しさは計り知れない。


「俺が誰か知れてよかったな、それじゃあ死ね」


サナは容赦なく剣を振り下ろした。強敵を前にして油断は禁物だ、一切の情けを掛けることなく命を絶つ、それが戦闘における鉄則だ。ドラークは、憎悪と失意のなか心臓の鼓動を止めた。


魔王討伐、歴史に刻まれる英雄譚になるだろう。


「金鶴、転移門を開けてくれ」


すると転移門が開き中から金髪白色の少女と銀髪褐色の少女が出てきた。ドラークに助言を与えていた悪魔たちだ。


「「お久ぶりです、サナ様」」


「久しぶりだな、金鶴(きんかく)銀鶴(ぎんかく)


金髪白色の少女の名は金鶴、銀髪褐色の少女の名は銀鶴というようだ。サナの言葉を、片膝をつきながら聞いている。


「さっき送った女をここに連れてきてくれ」


サナは先ほどの女、つまりスペチアーレをここに連れてくるように言った。金鶴は転移門から未だ意識の戻らないスペチアーレを連れてきた。


サナは、意識のないスペチアーレの頬をぺちぺちと叩く。多少の痛みはあるだろうが、目を覚まさせるには丁度いい加減だ。


「んんっ」


スペチアーレはゆっくりと瞼を開いてく。最初に認識したものはサナの顔だった、二番目に認識したのは金鶴と銀鶴。認識はしたものの、頭の処理が追いついていないのか、無表情でいた。


「サナ!」


頭が徐々に覚醒していき、サナの存在を理解することが出来たようだ。目の前のサナに向かって声かけた。


なぜ私を攻撃したのか、魔王はどうなったのか、フォードはどうなったか、聞きたいことが山積みで言葉が渋滞している。喉より先にでた言葉は皆無だった。


「落ち着け、魔王は倒した。慌てずに話せ」


サナが時間はたっぷりあることを伝える。魔王は倒したのだ、残る悪魔もサナが収める北の悪魔達だ。ここは安全だ。


「フォードさんはどうなったの?」


スペチアーレの口からでた言葉はフォードの現状についてだった。スペチアーレは誰よりも早く戦線を離脱することになったのだ、確認が取れないフォードのことを気にするのも無理はない。


「フォードは死んだ、いや殺した」


バチンッ。スペチアーレの平手打ちがサナの頬に激しい音をたてて炸裂した。スペチアーレは、無意識のうちにサナを殴っていたことに驚いている様子だった。だが逆にサナは、固い顔を崩さずスペチアーレを見続ける。


「本当なの・・・?サナがフォードを殺したなんて・・・」


涙で濡れた顔、スペチアーレの端正な顔が歪んでいる。スペチアーレにとって、今のパーティはなんだかんだと居心地のいいものとなっていたのだ。身勝手だけど優しいサナ、先輩として尊敬していたフォード、この関係は突然終わりを迎えたのだ。





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