魔王戦4
「さすが魔王だ、強い」
サナは魔王の強さを認めた。闇の魔法、宝鎧、宝剣を使っても倒せない、今までに遭遇した悪魔の中で一番強い。認めざるを得なかった。
「我も認めよう、貴様は強い」
またドラークもサナの強さを認めていた。多岐にわたる魔法、闇の魔法を駆使しても倒せない。歴代稀にみる勇者だ。
「そろそろ決着といこうか」
「よかろう」
魔王はサナの言葉に同調した。どうやら二人ともこの戦いに決着をつけるつもりのようだ。
ドラークは魔法を使った。魔王人生で一度も実践で使ったことのない魔法を・・・
「煙幕!」
ドラークが使った魔法は目くらましの魔法だ。サナの視界を狭めることで戦いを有利に運ぶためのものではない、たった一つの目的のためだ。ドラークは首の刻印をなぞり、叫んだ。
「フェニックスをこちらによこせ!」
ドラークは仲間を呼ぶことに決めていた。魔王たるもの強さと狡猾さが必要だ。ドラークの行動は、一見卑劣に見えるが、これは勝負ではない。戦争だ。勝った者が正義でしかない。
「・・・・・・」
だが少女悪魔の声は返ってこない。連絡がつながっているのは確かだ。だがなぜか返答がないのだ。ドラークの額に血に交じって汗が滴る。
「残念だったな」
サナは煙立ち込める場所からゆっくりと歩いてくる。その表情にはドラークを批判するものは感じられない。サナもまたドラークと同じく狡猾な男だからだ。目的を達するためなら、集団で個をいたぶることを善しと考えている。
「いくぞ」
サナは、先ほどよりも更にギアを上げた。これがサナの本気だ。先ほどまでのお遊びとは違う、本気の攻撃だ。ドラークは攻撃を知覚できずに切られていた。
「がはぁっっ」
ドラークは血を吐いて膝をついた。切られた肩から腰にかけて血がドクドクと溢れてくる。痛みと大量出血による貧血で、視界がブレる。
「何者なのだ、貴様は」
ドラークには信じられなかった。人間がこれほどの強さを持っていることが。上位の存在である悪魔、さらにその頂点にたつ自分が、劣等種である人間に手も足も出ずやられるなど想像できなかった。そんな気持ちからでた言葉だった。だが、サナから返ってきた言葉に、ドラークは更に混乱した。
「名前ぐらい知ってるだろ」
サナは一度もドラークに名を名乗っていない。にも関わらず、サナはこう返したのだ。ドラークが困惑するのも無理ないだろう。
「本当に知らないみたいだな、俺の名は・・・・グレート・サタンだ」
勇者であるはずの男が魔王の名を口にした。これほど摩訶不思議なことがこの世にあるだろうか。希望となる存在から聞かされた絶望の存在、ドラークはほとんど見えていない目を見開いて驚愕していた。




