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臧否の禍時   作者: まるサンカク四角
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魔界冒険6

 「サナ、どうして・・・」


スペチアーレは、意識を手放した。サナに対する疑問を抱えて。スペチアーレはサナに助けられたことで、明確な好意を抱いてしまった。好意は意識の有無に関係なく、発動している。しかし、意識を失う寸前に、サナの攻撃をくらったことで、好感度がフラットなものへと変わったのだ。人は、突発的なことが起きた時、頭が真っ白になる。全てのことが、平等になるのだ。頭の中に存在するのは、虚無。ただそれだけだ。


「おい、こいつを連れて行ってくれ」


サナは何もない空間に声を掛けた。


???「分かったわ」


声が聞こえたと同時に転移門が開いた。スペチアーレは転移門に吸い込まれ、消えていった。


「俺はお前に死んでほしくない・・・」


サナは小さく呟くと、ポツンとある扉を勢いよく開けた。


扉を開けると中には、東の魔王配下の上位悪魔が数十体と最上位悪魔が3体いた。ヴァンパイアやグレモリー、バアルやベヒモスなどの上位悪魔に、アスタロト、アスモデウス、ベリアルの最上位悪魔だ。本来、アスタロト、アスモデウス、ベリアル、ジャックで東の四天王と呼ばれていたが、今はジャックが欠け、三皇と呼ばれている。


「ジャックを殺したのは君かな?」

「こんなやつに負けるとは情けない」

「ドラーク様も警戒してるし、気を抜いたらダメだよ」


他の悪魔に比べて、より人型に近しい三皇は、口々にサナへの感想を口にした。しかし、この3人の中で、一番小柄で中性的な顔をした悪魔ベリアルだけは、気を抜くなと注意をした。他の二人もベリアルの言葉に素直に従っているところをみると、一番強いのはベリアルなのだろう。


「「分かってるよ」」


三皇の中で一番長身の男アスタロト、長身の体にヒョロヒョロの体つきという姿が、不気味さをより濃くしていた。


三皇の中で一番ガタイのよい男アスモデウス、装備から覗く凹凸の激しい腕は、全てを破壊しつくさんとするほどに感じられた。


そして一番の異質さを放つ男ベリアル、身長も体格もすべてが並以下、中世的な顔つきと、しなやかな腕や足、艶やかな長髪は、世の女性が羨むほどに美しい。


「俺は今、虫の居所が悪い。邪魔するなら殺すぞ」


そんな化け物たちを前に、サナそれを凌駕するほどの威を放っていた。下位の悪魔であれば、その場で失神し、絶命してしまうほどの膨大な気、それをサナは余すことなく放ったのだ。三皇は顔色を変えることはなかったが、取り巻きの上位悪魔は、足の自由が利かなくなり、ガタガタと震えていた。目を離すことも出来ず、逃げだしたい気持ちを持ちながら、瞳を逸らすことができない。金縛り、凄まれただけで、悪魔達は体を動かすことが出来なくなっていたのだ。


「怖がらないで、僕を信じて」


ベリアルが、慄いていた悪魔達に笑顔を添えて声を掛けた。ベリアルは魅了の力が優れている。ベリアルの声は全ての者を安心させ、ベリアルの笑顔は全ての者を魅了する。悪魔達はサナに対する恐怖を失い、安心と高揚感に包まれていた。


「「「「行くぞぉぉぉ!!!」」」」


取り巻きの悪魔達は、サナに向かって突進していく。そんな悪魔達のうしろで、ベリアルは子どものような、母のような、男のような、女のような、全てを網羅した笑顔を浮かべていた。


「ほんと怖いな」

「あぁ、一番的に回したくねぇな」


アスタロト、アスモデウスが呟いた。


「ひどいな、僕は皆に頑張ってほしいだけだよ」


ベリアルは二人の言葉に表情一つ変えずに返した。


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