魔界冒険4
「数で押せば怖くねぇぜ!」
一体のオーガが叫んでいる。それにつられるように他の悪魔達も喉が張り裂けんばかりに声を出し始めている。
「全く、舐められたものだ。中位悪魔が束になっても私達には勝てないというのに」
フォードは強気の姿勢を崩さない。
「かかってきなさい!」
スペチアーレもやる気十分のようだ。悪魔の怒声にも負けないほど声を出した。
「「「行くぜぇ!!!」」」
悪魔達が一斉に攻撃を仕掛けた。だが、力を付けたフォードとスペチアーレの敵ではない。どれだけ多く攻撃を繰り出しても、躱され反撃されてしまう。攻撃を仕掛ける度に、仲間が殺されていく。士気はどんどんと下がる一方だ。
「こいつらも強いぞ!」
「か、数で攻撃し続けろ!」
悪魔達は、二人の疲労を願って攻め続ける。数分の猛攻撃のすえ、残った事実は、無傷の相手と半数以下となった仲間たち。このころから、悪魔達に恐怖が再燃し始めた。
「む、無理だ。ど、どうかお助けを!」
恐怖で腰を抜かしているガーゴイルは、鬼王とヴァンパイアに助けを求めようと、サナたちが戦闘を行っている戦場を見た。
「誰に助けを求めているんだ?」
ガーゴイルの視界は、サナの顔で大半を占めていた。サナの顔は、ガーゴイルの顔と30センチほどの距離しかない。
「ひっ!」
ガーゴイルは更なる恐怖に喉が引き攣り、自然と声が漏れた。
「もしかしてこいつらに言ってたのか?」
サナは、両手にもつ、鬼王とヴァンパイア二人の首をガーゴイルの目の前に突き出した。生気のない目にだらしなく垂れ下がった舌、首元からは血が少しずつ滴り落ちている。首を切られて少し時間が経過しているのだろう、溢れ出る血が少ない。
「終わりだ・・・」
ガーゴイルは生きることを諦めた。完全に上の存在である上位悪魔が3人がかりで倒せなかったのだ。自分たちが勝てる道理が見当たらなかった。
「潔し、楽に死なせてやる」
サナは、神速の一太刀を振るった。対象は痛みすら感じることなく絶命する。死んだと体が気づくのは絶命した後になる、認識が追いつく前に死亡するため、痛みなき死となるのだ。
サナはその要領で、残った中位悪魔達を屠っていった。
先鋒戦、勇者の一本で幕を閉じた。




