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臧否の禍時   作者: まるサンカク四角
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魔界冒険3

 ただただ繰り返せされる蹂躙、魔王城に着くまでに行われた行為はそうとしか言えないものだった。通り掛けに遭遇した悪魔、悪魔の集落をすべて破壊しつくしてきた。魔界に侵入した勇者は、悪魔にとっての悪魔に他ならない。


「ははは、我々は歴代稀に見る英雄譚を築いているぞ」


フォードが得意気に語っている。自身が何をしているのかを全く顧みずに。敵意なき者を、悪魔だからと皆殺しにする、それが人間界に来る悪魔と同じことをしているという自覚すら持っていない。


「それは良かったな」


サナは、この一週間で反論する気すら失せていた。何を言ってもフォードには響かない、フォードの精魂を死ななければ治らないことを理解しているのだ。


「フォードさん、喜んでいる場合ではないわ。魔王城はもう目の前なのよ」


サナたちが立っている場所は、魔王城と目と鼻の先ほどしかない。人間界の地理で言えば、アシハラ壁内の端といったところだろう。後一時間もしないうちに魔王城に到着する。


「確かに、勇者としての本分を果たすとしよう」


フォードは意気揚々と答えた。前回魔界に来たときは、敗走するしかなかったが、今現在フォードに傷をつけることが出来た悪魔はいない。簡単に言ってしまえば、フォードは調子に乗っているのだ。


「このまま魔王城へ突入するぞ」


サナが冷静に告げた。幸い今日は、フォードもスペチアーレも戦闘をほとんど行っていない。残った魔力量もほとんど満タンだ。ダメージも一切ない、攻め込むには最善のコンディションと言えるだろう。



魔王城前


「中から強い魔力を多く感じるな」

「えぇ、今までとは違うわね」


サナの言葉にスペチアーレが冷や汗を垂らしながら答えた。


「いまされ逃げることは許されない」


腰が引けるスペチアーレをフォードが激励する。自身がどれだけ危険なことを言っているのか分からない。有頂天の成れの果てだ。サナとスペチアーレは分かっている。中に入ればスペチアーレとフォードの命はないと言うことを。ただ、サナはスペチアーレを守ると決めているから、スペチアーレは命に代えても魔王を倒すと覚悟しているから、逃げないと決めているのだ。


「よし、門を開けるぞ」


サナは魔王城の正門を蹴り一つで吹き飛ばした。門が消えたことで、城の内部が露わになる。視界の先には、数百を超える中位悪魔と数体の上位悪魔がいた。指揮官たる上位悪魔「鬼王」、精鋭上位悪魔「ヴァンパイア」が2体、ミノタウロス、ケンタウロス、バジリスク、サキュバス、インキュバス、ガーゴイル、さまざまな中位悪魔がいた。


「先鋒はこんなものか」


サナは、出迎えの悪魔の軍勢を前にしても焦り一つ持っていない。だが、警戒は持っている。そこがサナの強者たる所以だろう。


「いくぞ、二人とも」


サナはそういうと敵に向かって走り出した。スペチアーレとフォードもサナの言葉と行動につられて動き出した。


サナがまず狙ったのは、サキュバスとインキュバスだ。この悪魔たちは、戦闘力はほぼ皆無だが、催淫の魔法を行使する。催淫効果は、力を脱力させ魔法の威力を大幅に下げる。集団戦において、サキュバスとインキュバスはキーパーソンとなるのだ。


「普段のお前らなら見逃したが、今回は取らせてもらう」


サナは、サキュバスとインキュバスの首をどんどん跳ね飛ばしていく。ものの数分で戦場から二種の悪魔は姿を消した。


「くそっ、なんて強さだ!」

「こんなの勝てない・・・」


中位悪魔達は絶望に打ちひしがれていた。実力の差をまざまざと見せつけられてしまったからだ。


「落ち着け、気を付けるべきはこの男だけだ。お前らは残りの二人を囲み全力で叩け」


鬼王が乱れた悪魔たちに支持をだす。だが、未だ落ち着くことが出来ていない。


「そんな、それでは誰がその男を相手するのですか!」


当然の反論だ。中位悪魔にサナを止めることが出来る者などいない。


「お前ら手を貸せ」


鬼王はヴァンパイアに向かって援助を求めた。


「やれやれ、しょうがないですね」

「上司の仇でもありますしね」


このヴァンパイアは、以前サナに殺されたヴァンパイアの部下だったようだ。鬼王の提案に首を縦に振った。


「これで文句ないだろ!」


ヴァンパイアの同意も取れたことで、鬼王は部下たちに向かって大きく叫んだ。


「「「おおおおおお!やるぞ!!!」」」


中位悪魔たちにとって上位悪魔は雲の上の存在だ。そんな彼らが、サナを相手にすると言ったのだ。安心して、戦うことができるようになり、皆咆哮を上げた。


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