魔王城
空を覆う黒さ、漆黒の空に紅き月が佇んでいた。空を飛ぶ巨大な怪鳥、地を這う大蛇、酸の湖、鋭利な草木、漂う空気は妖気を孕んで若干の息苦しさを感じさせる。
【魔界】突入
魔王城
「ドラーク様っ!勇者が魔界へ侵入しました!」
偵察に特化した悪魔、ブラインドバットが魔王城玉座の間に飛来すると同時に、息絶え絶えに報告をした。勇者が侵入したのを確認し、すぐさま魔王城に向かったのだろう、疲労が目に見える。
「とうとう来たか、北の魔王に至急連絡を取るぞ!」
ドラークは、自身の首に刻まれた刻印をなぞった。刻印は発光し、音がつながった。
「なにかようですか?」
声は依然ドラークの元に訪れていた金髪白肌の少女悪魔の声だった。
「勇者が魔界に来た。協力を申す」
「わかりました。こちらから転移門を繋ぎ、予定通り配下の悪魔を送りましょう」
少女悪魔は、そう告げると通信を切った。
数分後、玉座の間に転移門が開かれた。門から出てくる100にも及ぶ上位悪魔、そして一人の人間が出てきた。
「北の魔王グレート・サタン様の配下、リッチのフェニックスと申します」
「貴様、リッチか。道理で人間と誤認してしまうわけだ」
人間と思われてた男はどうやらリッチだったようだ。永遠の命をもつ最上位悪魔、脅威的な悪魔だ。
「しかし、魔力をほとんど感じぬ。貴様誠に強きものなのか?」
「私は、不死王。いかなる傷も瞬時に回復する。リッチの中でも飛びぬけた回復力故に幹部の座を承りました。お役には立てると思います」
ドラークは驚いた。リッチは不死と言われているが、事実不死ではない。優れた治癒能力と永遠の寿命を持つだけだ。死に至るほどの強力な攻撃を受ければ、回復することなく死亡するのだ。だが、目の前の男はいかなる傷も回復すると言った。永遠の寿命に死なない体、まさに不死身だ。
「俄かには信じ難いが、信じよう」
ドラークは、フェニックスが幹部と言う立場を受けていることから、信じる事にしたようだ。
「我々は勇者が来るまで、こちらに駐屯させてもらいます。宿と食事を提供してもらえませんか?」
「それは勿論だ。魔王城の部屋を貸そう」
フェニックスとそれに従う上位悪魔達は、ドラークの部下である悪魔に導かれ部屋へと入っていった。勇者を迎え撃つ準備は魔王も万端だ。これから始まる勇者と魔王の闘いは、総力戦になることは確かだった。




