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臧否の禍時   作者: まるサンカク四角
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修行2

「制限魔法を掛けていいか?」


サナはベンリィに対して質問をした。制限魔法とは自分より下位の存在に対して、魔力・ステータスを調整できるものだ。


「勿論俺自身にもかける」

「なるほど、同じ魔力量・ステータスにして技術の向上を図るつもりか」


サナの提案に同意したことで、サナが制限魔法を自身とベンリィに付与した。これでサナとベンリィの実力の違いは経験と技術だけになった。


「よろしく頼む」


サナが改めて修行を頼んだ。頼みの言葉は、修行開始の合図となり、二人の訓練が始まった。



スペチアーレは目の前の男に話しかけた。


「すみません。名前を聞いてもいいかしら?」

「ズークと申します。以後お見知りおきを」


神主の名前はズークというらしい。昨日と同じく、高位な装束と装飾を身に着けており、戦闘には不向きに思える。だが、ズークにとってこの姿こそが戦闘服なのだ。


「どのような修行を要望か?」

「信仰系魔法を教えてくれないかしら」


ズークの質問にスペチアーレは即答する。スペチアーレの信仰系魔法を新たに会得したいという気持ちが湧き出ている。


「ふむ、では今日は八百万の神について学びましょう」



フォードの前にはラクーンが立っている。こちらは既に訓練を開始しているようだ。何度も拳がぶつかっている。


「なかなかやるな!だが経験がたりないぞ!」


ラクーンの拳がフォードの左頬に直撃し、後方に吹き飛ばされる。


「フォード、あんた格上相手とまともに戦ったことないだろ。それ故に先ほどからの俺との修行で動きが鈍っている」


フォードは東の大陸でも拳闘士上位に入る実力者だ。だが悪魔や剣士、魔導士も含めてしまえば、そこまでの強者とはいえない。にも関わらず、フォードに古傷がほとんどとして存在しないと言うことは、そういう事なのだろう。


フォードは死の恐怖を知らない、それが起因して恐怖を感じると動きが鈍ってしまっているのだ。


「修行の内容を決めた!俺との訓練では、技術とスキルを教える!死の恐怖は、日が沈む禍時に学んでもらう!」


禍時が発生すると、悪魔が多く出現する。フォードでは厳しい悪魔も当然のように現れるのだ。フォードにとっては今まででは得られなかった経験を多く得られるだろう。



 日が傾き、そろそろ禍時が発生するという頃、サナたちの修行は終了した。サナとフォードは体中傷だらけであり、修行の厳しさが感じられたが、スペチアーレは全くの無傷だった。


「くそ、やっぱ強いな」

「ああ、大分扱かれてしまったよ」


サナとフォードは口の中に溜まった血を吐き捨てながら言葉も吐き捨てた。


「すごい傷ね、今からの戦闘に参加できるの?」

「ああ、傷はすぐ治してもらう」


スペチアーレの質問にサナが返答した。


「それよりスペチアーレ君、君はなぜ傷一つないのだね?」

「今日の修行は、信仰対象である神を理解することだったので、一度も訓練はしていないの」


スペチアーレは今日一日中、学科しかしていなかったようだ。体力も魔力も余裕がある。


サナとフォードは傷を癒してもらいながら、体力を回復させている。もうじき始まる悪魔との闘いに備えて、少しでも力を回復しなければならないのだ。全回復とはいかないが、サナとフォードはある程度力を取り戻し、禍時が始まる前には戦闘準備を完全に整えた。


日が体半分を地平線に潜りこませたことで、世界が曖昧な色へと変わっていく。次元が歪み、悪魔が次々と現れ始めた。


修行ということもあり、サナとフォードは誰よりも前線に立たされていた。サナ至っては、さら自身に制限をかけて戦っている。スペチアーレは魔導士であるため、修行といえども前線に立つことはなかった。


サナとフォードは傷を負いながらも、修行で得た技術を駆使して何とかしのいでいる。スペチアーレはいつも通り戦闘しているため、大した苦労はしていないようだった。



太陽が完全に沈み、世界が暗闇に呑まれた時、悪魔の出現は止んだ。残り数体の悪魔を倒した時には、サナとフォードはまた傷だらけになっていた。だが、この短時間で確実な成長を感じられるほど技術が上がっていた。


「疲れた、さっさと寝たい」

「そうだね、今日は私も早く眠りにつくとしよう」


二人は、虚ろな目をしながら、タカマガハラ聖堂に向かって歩いていく。それを見つめていたスペチアーレは声をかけるのも忍びなく、二人の背中を見送った。


修行一日目、男性陣にとっては、地獄であることは明らかだったが、その分強さも比例して上がっているので、修行としてはよいのだろう。修行終了までまだまだ時間は残っている。各個にどこまで力を付けるのか、期待が膨らむ一日となった。


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