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臧否の禍時   作者: まるサンカク四角
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教会

 「・・・ベンリィだ」


ベンリィは、少し口ごもるが、続いて名前を伝えた。


「ベンリィか、改めて挨拶しよう。俺はサナ・ターゲット、サナでいい。そんでこっちが・・・」

「スペチアーレ・ジオメトリーよ、呼び方はなんでもいいわ」

「フォード・トルクだ。私も好きなように呼んで構わない」


スペチアーレは、苦い顔をしていたが、逆にフォードは清々しい表情を浮かべていた。ベンリィはフォードの表情に憤りを感じながらも、サナの手前ではどうすることも出来ず、言葉を返した。


「よろしく、スペチアーレ、フォード、それとサナ。今日はもう暗い、訓練は明日からでいいか?」

「あぁ、よろしく頼む」


ベンリィは、いち早くこの場から去りたいと願っていた。ベンリィの表情や態度、声音から漏れ出る願いに、サナは目敏く気づいていたが、そこに攻め込むことはせず、受け流した。


「この村に宿泊できる場所はあるか?」

「ここは村外の村人が来ることは滅多にないので、宿屋はない。教会の一部に寝泊まりすることは可能だが」

「そこで構わない。そこまで案内してくれるか?」

「・・・はい」


ベンリィの安息はもう少し先になりそうだ。断ることが叶わないお願いを了承し、サナたちを教会に案内し始めた。


ほんの数分で、教会の前に着いた。村が小さいこともあり、マガトキ村の中心に位置する教会でさえ、時間を使うことなくアクセス可能なのだ。


「ここが、件の教会。タカマガハラ聖堂だ」


教会とは言うが、造りは、神社そのものであった。巨大な鳥居が二つに、社が鎮座している。灯りは、鳥居から社に向けて均一に並べられた松明、社の中を照らす蝋燭だけであった。


「神主には話を通しているので、説明は中で聞いてくれ」


ベンリィは、説明を丸投げし、その場を去っていった。取り残されたサナたちは、社に向かって歩き出す。


「またんか!」


鳥居をくぐろうとしたとき、社の中から声が聞こえてきた。突然の声に足を止めるサナたち、その声の主が表れるのをその場で待っていた。


「鳥居をくぐるときは、一礼を忘れるな」


坊主の翁が、社の扉をずらし開けながら、声を出していた。この男が先ほど話に上がった神主なのだろう。服装や身に着けている装飾から、高位の存在であることが伺い知れる。


「悪かった。俺たちは信仰系魔法を使うやつがいなくてな、作法が分からないんだ」


サナは謝罪の言葉を口にし、作法の享受を申し出た。


「ふむ、無神の者どもか・・・よかろう、では教えてやろう。鳥居での一礼を行い中に入れ。入らば、手水舎で手と口を清めよ。その後、参道の端を歩いて社の中に入りなさい」


サナたちは、初めてのことで、不格好ではあったが何とかやり切り、社の中に入った。


「お主たちの部屋は用意してある。ついてきなさい」


サナたちは、神主の後について、木造の廊下を歩いていく。歩くたびにギシギシと音が鳴る廊下は、夜の静けさによって、一層耳に響いた。


「これは、なんだ?」

「これとは不敬ですぞ、これらは神の姿を象ったものです」


サナは、廊下の壁に描かれている、人に似たナニかについて質問したのだが、どうやらその絵は、神を表していたようだ。描かれている絵には、太陽の化身のような姿や、水の化身、火の化身、様々な自然由来の神が描かれていた。


「いろいろな神がいるんだな」

「ええ、我々は八百万の神を信仰することで、様々な魔法を使用することできるのです」


スペチアーレは興味深そうに神主の話を聞いていた。信仰系魔法を会得していないスペチアーレにとって、この話は新たなる力の鍵になるかもしれないのだ。


「つきました。こちらでお休みくだされ」


神主は、一言述べると、自室に向かって歩いていった。外からは、パチパチと薪が燃える音が不規則に聞こえてくる。薪の音だけではない、虫の鳴く声や木々の揺らめく音すらも入ってくる。防音性は全くないにも関わらず、サナたちは不快に感じず、むしろ心地よさを感じていた。


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