決着
サナが攻撃をしかける。抜刀による加速を利用した、所謂居合を使って下段から中段に向けた一閃を放った。相対する男も居合を行う。中段から上段へ流し、重力を利用し中段まで振り下ろした。スピードはやや劣るが威力が増す攻撃だ。
二人の白刃は、接触すると同時に火花を上げたが、力は拮抗していた。両者の刀身はピクリとも動かず、決着はつかなかった。何度も刃が離れ、ぶつかりを繰り返すが攻勢は動かない。
男は一度距離を取り、守りの構えを取った。先ほどからの攻防で、腕力では決着がつかないと判断したようだ。次なる手を考えるため、防御に徹することにした。
「やはり、強さはステータスだけじゃないな。凄い技術だ」
「ステータスの限界はすぐにくる。技術こそが強さだ」
男は技術こそが強さだと言っていたが、自身の言葉に自信を持てなくなっている。目の前の男に、技術など皆無だ。にも関わらず実力は拮抗している。年齢的にも未だレベル100ではないだろうことが理解できる。圧倒的なステータスを持ってすれば、極めた技術も通用しないと思ってしまったのだ。
守りに徹し続けてどれほどの時間が経過しただろう、時間が過ぎていくたびにサナの攻撃に鋭さが増す。考えついた策が、サナの攻撃の鋭角さによって通用しなくなる。思考しては、考え直し、思考しては、考え直す。一度たりとも考えついた策を実行できずにいた。通用する攻撃が減っていく一方で、防御も破られ始めている。
「くそがっ!!!」
男は、これ以上時間をかけるのは不利になると考え行動にでる。
サナの一太刀を肩に受け血飛沫が上がった。鍛えられた筋肉、太い骨、それらに触れる度にサナの剣速は鈍くなっていく。
『ここだ!』
男は痛みを堪えながらも、剣を振るった。
肉を切らせて骨を断つ。男が唯一できる策であった。
「ここまでか・・・」
サナは向かってくる刃を眺めながらつぶやいた。次の瞬間、意識を失ったのは、サナ・・・ではなく、攻撃を仕掛けた男だった。




