スタートアンドディスコード
門の外に、村は数えるほどしかない。王族・貴族がアシハラの中心に住み、その周りを農民、商人、職人の国民が住んでいる。アシハラで壁に囲まれた安全な場所に住めるのはここまでの人々である。貧しく税を納められない者、類縁に罪人がいる者は皆、壁外に追い出され、自給自足で生活しなければならない。そんな人々が集まり形成しているのが村である。
「まず俺たちはサド村に向かうぞ、そこで次の村までの食料と飲み物を譲ってもらう」
「私に命令しないで、言われなくてもそれぐいのことはわかってるわ」
歴代の勇者の冒険録によって、旅のルートは大凡決まっている。いかに安全に最短で目的地につけるか、今までの記録が役立っているのだ。だが、最も安全なルートといえども、モンスターに遭遇しないということはない。
「ムー、ムー」
その身体は青く半透明、四肢はない、いや体と呼べる形するしていない。簡単に言えばスライムである。そのスライムが5体、草原の上でのんびりと過ごしていた。
「出たわね、モンスター」
すぐさま戦闘態勢にはいったスペチアーレは、杖を構え、詠唱を始める。魔法陣がスライムを包みこみ、魔法が発動することを知らせる。
「ライ…「待て」」
「スライムは人間を攻撃しないだろ、なぜ殺そうとする?」
スライムはデンプンと水だけを食す。その為、スライムは人を襲わないどころか、他の生物を襲うことすらない、無害な生物なのだ。勇者はその事実を鑑み、スペチアーレを制した。
「何言ってんのよ、あんた。モンスターは全部討伐すべきでしょ。それにこんな雑魚でもレベルアップの経験値ぐらいにはなるのよ。倒す理由なんてそれだけで十分でしょ」
「スペチアーレ君の言う通りだぞ、サナ君。君のように選り好みしていては、魔王を倒せる力など得られるわけがない」
「なら、勝手にしろ。俺は戦わない」
冷たい視線をサナに向ける二人。勇者でありながら魔物を討伐しないというサナ。二人ともサナに嫌悪感を持っていたが、実力はそれなりに認めていた。だが、今の出来事でそれすらも消えてしまったようだ。
「別にいいわよ、あんたは端で震えてればいいのよ」
スペチアーレは再度詠唱を始める。今回はサナも止めるつもりがないようである。ほんの数秒で魔法陣は完成し、スライムに雷が直撃する。
「雷針」
空気を切り裂く激しい雷音。この一撃は空気だけでなく、サナ達の仲を切り裂く決定的なものとなった。その後、フォードもスライムに攻撃を仕掛けていく。30秒と経たず5体のスライムは消滅し、戦闘の跡だけが草原には残っていた。
戦いは終わり、サド村に向けてまた歩みを進めるサナ達。夕刻になるまでにモンスターに何度か遭遇したサナ達ではあるが、殆どはスライムであり、スライム以外でも、ゴブリンなどの下級悪魔であった為、苦労なく旅を進めるこどかできたようだ。
「サナ君はゴブリンとは戦うのだな。なぜなんだい?」
「そうよ、ゴブリンだって人間を襲わないじゃない。なんでゴブリンは倒すのよ」
「そんなことお前が知ってどうする。俺が何を言っても、魔族は全て殺すんだろう」
「そうね。あいつらに生きてる価値なんてないんだから」
会話はここで途切れ、静かな時が訪れる。
夕陽の体が半分沈み込み、大地や空が薄暗くなる黄昏時、サナ達は野営を張り、食事と寝床を準備しだした。今日の旅はここまでのようである。
食事も終わり寝床に入った三人は、各々違うことを考えていた。
''やっぱりこの空が一番輝いているな''
"初めての壁外での就寝ね。不思議な感じがするわ"
"サナ君はゴブリンが人を襲うことを知っているかのようだった。いや、壁内にいてゴブリンの実態を知っているわけないか、考えすぎだな"
初めて壁外に出るスペチアーレは知らないことだが、ゴブリンが人を襲う事例は頻繁にある。襲う理由は、捕食の為ではなく、情欲を満たすこと、唯それだけである。この酷い実態すら壁内の人間は知らない。文献に載るゴブリンの情報しか知らないのだ。
なぜそのような情報が知らされないのか、その理由は至極単純、王族と貴族、さらに勇者までもが、今迄それらを秘密にしていたからである。
壁外の人間は人に有らず
この考えは上流階級の人々が持っているものである。意見を述べることもできず、壁内の人々に知られる事もない、そんな人々に救いを与える必要性がないと思っているのだ。
王家も貴族も歴代の勇者達でさえも、人の上に立つ者は皆、人々に知られてはいけない秘密がある。歴史の表舞台には現れない闇、真実が歴史に顔を出す時は来るのだろうか、今はまだわからない。
書いたらわかる、むっずいやつやん。キャラの喋り方、全然安定しないやん。もっとちゃんとキャラクター練らないとアカーン。