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臧否の禍時   作者: まるサンカク四角
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頼ること

早朝、ムーキ村の正門には、三つの影があった。次なるキマ村を目指して、出発しようとしているサナたちだ。


「サナ、これからは寄り道せずに、キマ村に向かわない?昨日、村人と話して考えたの。村に近い悪魔から討伐していくのが重要なのよ」

「いや、旅の進め方は変えない」


サナは、旅路を変える気はないようだ、スペチアーレの意見を却下した。


「どうしてよ!」


スペチアーレは激怒している。今までのサナなら、自身の意見に賛成してくれると思っていたのだ。しかし返ってきたのは否定の言葉だったのだ。


「蓮という男の話は聞いている。あいつはキマ村に向かっていると聞いた。それなら蓮がキマ村近くの悪魔を討伐してくれるさ」


サナも村人の話を聞いていたようだ。蓮と言う男の行先も。


「その人は勇者ではないのよ!一般人に頼るなんて勇者失格よ!」

「聞いた話では蓮という男は相当強い。俺たちが手助けしなくても大丈夫だろう。それなら、別の場所で悪魔を討伐する方が、効率がいい」


サナの考えはとても論理的だ。使える物をすべて使い、適材適所でこなしていく。一般人であろうと有用なら利用する、それがサナの考え方だ。


「そんなの勇者じゃないわ!私たちは市民を守るために・・・」

「調子に乗るなよ、スペチアーレ。俺たちは全能じゃない。頼らないことは相手を見下していると同義だ」


サナは、静かに反論した。澄んだ声が、澄んだ空気を震わす。早朝の寒冷な風が吹き抜けた。風はサナたちの髪を靡かせ通り過ぎていく。


「ごめんなさい、でももし蓮さんが死んだら、私たちは・・・」

「大丈夫だ。あいつは死なない」


サナは蓮と会ったことは無いはずなのに、確信をもって答えた。しかしサナの言葉は、スペチアーレを納得させるには十分な効果があったようだ。スペチアーレはそれ以上何も言うことはなくなった。


「とは言っても、ここからキム村までに発見されている悪魔の根城は一つだけだ。そこを潰したら、キム村にまっすぐ向かおう」


サナ達は、門の前にいる男に門を開くように頼んだ。ゆっくりと開く門に引っ張られるように、サナたちは村外にでた。村々の偵察はそろそろ終わりを迎える。偵察が終われば本格的な冒険になる。情報も何もない未知の世界。魔界に向かうまで、もうすぐだ。


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