使者
東の魔王ドラーク・ブラウの前に、二人の少女がいた。一人は真っ白の肌に金色の髪、もう一人は褐色の肌に白色の髪、それ以外の違いはないと言ってよいほど酷似していた。双子と言われても疑わないほどだ。二人は悪魔らしい角と尻尾、羽を携えており、容姿に見合わない妖艶さがあった。
「貴様らどの面下げてきた!貴様らのせいで、我が側近を失ったのだぞ!」
「私達のせいではないでしょ、貴方の側近が弱かっただけよ」
件の側近とは、サナに敗れたジャックのことである。ドラークは何やら憤慨している。
「東の勇者は強敵になりうるから、早めに潰せと貴様らが言ったのだろう!」
「えぇ、そういいました。ですが、勇者の実力を見誤ったのはそちらでしょう。最初から貴方が出向いていれば倒せたかもしれませんよ」
「くっっっ」
ヴァンパイアとジャックがサナを襲撃したのは、この少女悪魔達の助言あってのことだったようだ。
「我が君であるグレート・サタン様からの言葉を伝えます。『今の貴方では勇者には勝てません。魔王城にて、総戦力で迎え撃つのが吉』だそうです」
「ふん、貴様らの言葉など最早聞かぬわ!」
「私達はそれでも構いませんが、後悔するのは貴方ですよ」
「それは・・・・」
「今回は私達の兵もお貸ししますよ」
二人の少女は北の魔王であるグレート・サタンの配下の者のようだ。ドラークに勇者殺害の方法を供述している。ドラークは二度と従うまいと考えていたようだが、少女の発言を聞いて悩んでいる。今回は兵も貸してもらえると言っているので、良い条件ではある。
「兵とはいかほどだ?」
「私達と主が出ることはありませんが、幹部を一人と上級悪魔を100ほどお貸します」
ドラークは頭の中で考える。幹部といえば、恐らくは最上位悪魔であろう。それに加えて100の上位悪魔、かなりの戦力になる。少女の話に乗ることに決めたようだ。ドラークは話し出す。
「貴様らの言う通りに動こう。サナが魔界にきた際には協力を願うぞ」
「えぇ、もちろん」
要件を伝え、交渉も終わったことで、二人の少女はテレポートした。行先は恐らく北の魔王の城だろう。魔王城に残ったドラークは、一人微笑んでいた。勇者がくるまであと少し・・・




