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臧否の禍時   作者: まるサンカク四角
33/102

ムーキ村

 ムーキ村までの道程には、中位悪魔が出る事はしばしばあったが、上位悪魔が出てくることは無かった。


「後二つ村を回ったら、マガトキ村にいくぞ」


サナは、スペチアーレとフォードに向かって言葉を漏らした。今向かっているムーキ村、次なるキマ村で通常の旅は終わりだ。だが、サナはマガトキ村に行くと言った。


マガトキ村とは、名前の通り魔界と人間界の境にある村だ。夕刻時になると、世界が曖昧となり、魔界と繋がる場所だ。マガトキ村は、魔界から漏れ出る瘴気によって常に曇っており、とても不気味な場所である。人口はとても少ないが、狂人が多く魔族と日々戦闘を繰り返す猛者が数多存在する。


前勇者であるマスタングは、フォードとともに一度だけ魔界に行ったことがある。ヴァンパイア一体に苦戦を強いられすぐに撤退したが、その時にフォードはマガトキ村を訪れたことがあるのだ。


「マガトキ村に行くということは、魔界に入るつもりか?」


フォードは、引き攣った顔をしている。一度体験した魔界は、人間が踏み入れてはいけない場所だと知っているのだ。


「あぁ、だが今の俺たちではすぐに死ぬだろう。だからマガトキ村で、レベル上げと修行をする」


「それだけで魔界入りするつもりか?」

「その通りだ」


サナは、淡々と言葉を紡ぎだしていく。魔界は東の土地で一番危険な場所にも関わらず、恐怖も焦燥も歓喜も、何も感じさせず発言した。


「わかった。ならば私も腹を括ろう。だが、命の危機と感じたらすぐに撤退すると約束してくれないか?」


「いいだろう。スペチアーレ、マガトキ村に着いたらテレポートの陣を用意してくれ」


「わかったわ」


「それじゃ、ムーキ村にさっさといくか」


ムーキ村まで後一時間と言ったところだろう。日が沈むまでには村にたどり着けるだろう。



空が薄暗くなってきた。地平線の奥に太陽が少しだけ顔を覗かしている。もうすぐ空は星しか存在しなくなるだろう。


「ついたな、ムーキ村」

「村の近くには悪魔もほとんどいなかったし、困ってはいなさそうね」


ムーキ村に着くまでの一時間、悪魔にはほとんど遭遇しなかった。現状この村には、悪魔による問題はほとんどしてないことが想像できる。


「初めて見る顔だね?どこの村からきた?」


ムーキ村の正門にいた男に話掛けられた。貿易商と勘違いしているようだ。


「俺たちは勇者だ。一日ほど停泊したい」


「ちっ、わかりました。中へお入りください」


男は門兵だったようだ。門を開け、サナたちがムーキ村に入ることを許可した。だが、男の顔はとても嫌そうなものを見る目をしていた。


「今日も一日の滞在だ。今日の内に物資を揃えて明日の朝には出発するぞ」


サナはスペチアーレとフォードにそう告げると、一人歩いていった。


「僕らも必需品を買いに行こう」

「えぇ、そうしましょう」


スペチアーレとフォードは同じ方向に向かって歩き出した。フォードは昨年もこの村に訪れているため、まっすぐに商店街に向っていった。


「必需品は買いそろえた。食事をして今日はもう休もう」

「では、あの店で済ませましょう」


二人は、夕食を済ませるため、近くにあったお店に入った。中は、酔っぱらいの男たちが騒いでおり、とても賑やかな雰囲気だった。なにか良いことがあったのだろう。皆笑顔で楽しそうだった。


「蓮さまのおかげだ~、あの人こそ本物の勇者だ~」

「クソ勇者なんていらねー!」


酔いが回り、口が軽くなっていたのだろう。勇者の悪口を大声で発する男たち、お店の中に勇者のパーティーメンバーがいるとは露程も思っていない。


「聞き捨てならないわね!私達をバカにしているの!」


最初は我慢していたスペチアーレだったが、男たちの止まることを知らない悪口に耐えられなくなったようだ。


「なんだ~嬢ちゃん、何をそんなに怒ってるんだ~」

「私は勇者パーティーの一人、スペチアーレよ」


スペチアーレの言葉を聞いて、男たちの体と店内の空気が凍り付いた。


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