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臧否の禍時   作者: まるサンカク四角
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依頼

 サナは宝鎧を異空間に収納する。収納魔法、初歩魔法であり、ほとんどの戦士が習得している。収納できる者は無生物に限られており、さらに5個しか入れることはできない。収納できるものは大きさなどでカウントするのではなく、一つのものでカウントされる。薬草を5個入れることもできれば、鎧を5個入れることもできるのだ。制限はあるが便利な魔法だ。



「サナ君、宝鎧を与えられたのは本当か?」


正門の前には既にフォードとスペチアーレが待っており、サナの姿が見えたと同時にフォードはサナに質問を投げかけた。


「少し違うな、借りているだけだ。いずれ返す」


サナは、フォードの発言を訂正しながら返答した。


「でなければ困る。本来宝剣も宝鎧も君が持つべきではない。君もそう思うだろうスペチアーレ」

「私は、分からない・・・」

「っっ」


フォードは、スペチアーレが同意してくれなかったことに息が詰まった。変わり始めている。フォードにとって嫌な方向に。


「不毛な話は終わりだ。スペチアーレ、テレポートしてくれ」


テレポートが開始される。サナたちは、一瞬でドラム村に着いた。旅の準備はすでに整っている。すぐにでも出発しようとしているサナたちに、声が掛けられた。


「勇者様、我々を助けてくれませんか?」


皺が幾層にも積み重なった男性がいた。その男の周りには中年の男が複数取り巻いており、この老人がドラム村で上の立場ということが分かる。


「私はドラム村村長です。数か月前から村の近くにベアウルフが住み着いてしまっているのです。討伐してくれませんか?」

「・・・ベアウルフは何体いるか分かりますか?」

「一体しか確認できておりません。しかし我々ではどうすることも出来ません。どうか、どうかお願いします」


村長とその取り巻きの男たちは、土下座しながら懇願している。


「面倒くさい、自分たちでなんとかしろ」


サナは人々の一所懸命の懇願も意に介さず吐き捨てた。切り捨てられた村人たちは絶望の顔をしている。ベアウルフによって、ドラム村には甚大な被害が出ていた。他の村との交易の危険性、村の外への植物や動物の狩猟・採取の危険性どちらも例年の比ではない。さらに村人にも直接被害は来ており、既に十数人の死傷者が出ているのだ。村人の絶望は計り知れない。


「そ、そんな・・・」


サナは絶望に打つひしがれる村人から目を背けると、そのまま正門に向かって歩き出した。


「なんで助けてあげないのよ!彼らの姿に何も感じなかったの!」

「うるさい、あいつらを助けても何もメリットがない。物資はどの村でも無料で手に入る。あいつらが出せるのは、せいぜい金か物資だけだろう」

「だからって、あんたはやっぱり最低の勇者よ!」

「・・・自分から討伐にはいかないだけだ。偶然遭遇したら倒すさ」


サナはドラム村を出発すると、次なる村、ムーキ村に向かわなかった。明らかな遠回りをしている。それも安全な道ではなく、魔獣が出やすい邪険な道を進んでいた。


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