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臧否の禍時   作者: まるサンカク四角
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門出は寂しく

 魔王交代の知らせは国中を忽ち駆け抜けた。街は、騒がしく、皆が浮き足立っていた。勇者の旅立ち、本来ならば希望に満ちたその日が、人々にとって絶望の日となってしまったのだ。  

  

 ところ変わってアシハラ正門、そこに三つの影が伸びていた。勇者パーティーである。三つの影は一定の距離が空いており、信頼を微塵も感じさせない。むしろ、嫌悪感を滲ませる程である。


 「なんであんたみたいなのが勇者なのよ。マスタングさんと旅をしたかったのに。」


 「俺に言われても知らん。あいつが弱かったのが悪いんだろ。文句ならあいつに言ってくれ。」


 「途中まで押されてたくせによく言うわね。次やったらあんたなんか負けるに決まってるわ。」


 「それはどうだろうな。」


 魔導士であるスペチアーレは先代勇者であるマスタングを崇拝にも似た感情を持っていた。それほどに憧れていたマスタングがぽっとでの青年に敗れた。その事実は、サナによる勇者愚弄事件を抜きにしても、スペチアーレに嫌悪感を抱かせるには十分だったようだ。それは武闘家であるフォードも一緒の様子だ。


 「あまり調子に乗るなよサナ君。一度マスタングに勝ったくらいで自分が最強だと思っているんじゃないか?あんなもの唯の偶然でしかない。来年の大会までの間だけだよ、君が勇者を名乗っていられるのはね」


 「それはあんたの願望か?フォードさん」


 「なに⁉︎」


 一触触発。仲は深まるどころか離れていく、勇者パーティーとしては異常な状態。だが、この姿こそがサナが求めている形なのだろう。


 フォードが言い返そうとしたその時、鐘の音が一度、二度と鳴り響いた。旅の始まりを知らせる音である。本来であれば鐘の音にも勝るほどの歓声が毎年聞こえているのだが、今年は民衆も疎らであり、声が鐘の音にかき消されている。勇者が嫌われている為か、魔王交代の情報のせいか、歴代でも稀にみる人の少なさである。


 門が、大きな音をたてながらゆっくりと上がっていく。30秒ほど経つと音が止み、完全に門が開かれた。勇者達は門の外に一歩を踏み出した。その刹那、冷く速い風がサナ達の頬を切り裂いた。いや、実際に肌が切れた訳ではないが、錯覚してしまう程の不吉な風だった。


「嬉しいことだな、風でさえ俺を嫌ってくれているとは」


 サナは誰にも聞こえない程小さく、吐き捨てるように呟いた。


 

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