表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
臧否の禍時   作者: まるサンカク四角
25/102

夜の月

 討伐が決定したとしてもすぐには動けない。サナたちは、顔も能力も全く知らないからだ。

情報を集める為、事件当時に現場にいた兵士に聞き込みを行っていた。分かった情報は以上になる。


『歳は20代前半』『白髪に赤い瞳であり恐らくアルビノというものだろう』『特殊能力は使っていなかったが恐るべき身体能力であったため、肉体強化系の能力の可能性あり』『傷を負わせることはできたが、戦闘は出来るだろう』


「兵士たちが傷を負わせることが出来たなら、国王直属の高潔の使徒でなんとかなるだろう」


サナは皮肉を込めて言葉を吐き捨てた。


「サナ君、それが不可能なのは知っているだろう」


フォードはサナの発言に、煩わしそうに答えた。


高潔の使徒、高い能力を有していながらも実質戦力にはならない者たち。彼らの前世界では、戦いなど全く経験することが無かった。力を持とうとも、その力に見合う覚悟も経験も全く有していない、彼らは、張りぼての兵器なのだ。


「使えない奴らを天は呼びやがる」

「それ以上は止めたたまえ、天を愚弄することは私が許さない」


天とは、天界のことをさす言葉だ。この世界には、魔界と同時に天界も存在する。多くの人間は高潔なる存在である天使たちを崇拝し、畏怖している。天界を愚弄することは、この世界では許されないのだ。


「はいはい、止めますよ」


サナはフォードに注意され、素直に愚痴を止めた。


「それより、どうする?相手は手負いだ、手分けして探すか?」

「私はそれでよいと思っている。兵士たちで傷を負わせることが出来たのだ。我々なら一人で討伐も可能だろう」

「私もそう思うわ」

3人の方針は決まった。個別で討伐するようだ。


「なら、俺は行く」


情報と方針が決まれば、城にいる必要はない。サナは一人、城を出て町に向かって行った。


「私達も行こうか」

「はい」


フォードとスペチアーレもその後それぞれが別の方角へと歩みを進めた。


時刻は、午後の9時頃。夜空には大きな満月が輝いていた。月の美しさは、同時に不気味な怪しさを孕んでいた。切り裂きジャック、19世紀末の殺人鬼。この世界にその存在を知る者は、高潔の使徒を除いて誰もいない。だが、夜の月が映し出す空気だけは、殺人鬼の姿を知っているかのようだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ