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臧否の禍時   作者: まるサンカク四角
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魔の一報

 太陽が丁度真上に昇っている頃、城の中では勇者達の出発式が行われていた。出発式は神聖なものであり、城内では、厳かな空気が漂っていた。


 「第四一代勇者サナ。お前にこの剣を授けよう。この剣は、代々勇者に受け継がれる宝具。持ち主に合わせ、能力が変化する特殊な剣だ。この剣で魔王を打ち倒す事を祈っているぞ。」


 「はい、精進いたします。」


 サナは膝をつき、国王に返事をする。文面だけで表現すれば、何の問題もないように思えるだろう。しかし、サナから漂う雰囲気は、朝礼で校長の話を聞きながす子供のようなものを感じさせる。畢竟、サナは真面目にこの式典を行なっていなかったのである。 


 サナが分かりやすいのか、はたまた周りの人々が空気を感じとる力に長けているのか、どちらにしても、この場にいる国王を含む全ての者は、サナに対し良い感情は持っていない事だけは確かである。


 城内の空気は厳かさを保っていたが、鉛のように重くなっていく。誰もがこの式典が早く終わることを望む程にどんどんと。どんどんと。


 サナに剣を授けた後には、スペチアーレ、フォードにもそれぞれ代々継承され続けてきた宝具を授けていく。本来であれば素晴らしいその工程ですら、今はこの場から出ることの出来るまでの作業でしか無くなっている。今この場で平常でいるのは国王、そして勇者パーティー達しかいないだろう。


 一刻という短い時間であったが、殆どの者には数日に感じるほどの緊張、その式典も後は国王による`旅路の激励'のみとなった時、場内の扉が勢いよく開いた。


 「国王陛下!大至急お知らせしたいことがあります!」


 50歳を超えているであろう男が息も絶え絶えになりながら場内に駆け込んできた。見た目からして、高官であろうことがわかる。この男はすぐさま国王に耳打ちをする。


 「それは確かな情報なのか」


 「はい」


 ほんの少しの静寂。その静けさは、これから起こる激動の前触れを感じさせる。


 「北の魔王が死んだ。いや、殺された」


 城内が騒然とする。それもそのはずである。ここ数百年、四大魔王は一度も変わらず、魔族の最高戦力であり続けていたのだ。その魔王の一角が消えた。更には、寿命や病気ではなく、殺された。この知らせは、数世紀でも稀にみるビッグニュースなのである。


 「国王陛下!それは一体どういうことですか!」


 「誰かが魔王を討伐したということですか」


 「それとも………」


 次々と質問が飛ぶ。皆、不安なのだ。勇者は魔王を倒したいない。その状況で魔王を倒せる人間などいるとは思えない。その考えから、どうしても導き出してしまう答え。それは現北の魔王を超える新魔王の誕生である。


 「予想がついている者もいるだろうが、ハッキリと伝えよう。新魔王が誕生した。」


 新勇者、そして新魔王の同日の誕生。人類にとってこの日が、希望の兆しとなるのか、はたまた絶望の始まりとなるのか、知るものはいない。

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