オークの根城3
暑い大地に冷えた空気、その二つを起こした男は、飄々とした姿で、立っていた。
「何言ってんのよ!人のせいにするんじゃないわよ!」
「サナ君がやったんだろ!」
罪を擦り付けられた二人は、盛大にツッコミをした。オークキングもその二人に追従する。
「燃えた刀を持ちながら、やっていないは無理があるぞ!」
そう、サナのもつ妖刀は、未だ炎の如く鈍い朱色に輝いているのだ。「あっ」と消え入りそうなか細い声を漏らした後、サナは抜き身の刀を鞘に納めた。
「バレたならしょうがない。だが、俺たちは勇者だ。こいつらも当然お前の敵だ」
本来なら正しい事なのだが、先の行動により、仲間を道連れにする卑怯者のように映る。更には、もともとの悪人面も相まって、彷彿とさせるのは悪魔の姿だった。
「「「こいつ最悪だな・・・」」」
サナを除く2人と一体の悪魔は、声を揃えてサナの批判をした。だが、所詮敵同士である、オークキングは、自分の立場を急に思い出したようだ。口調を戻して、3人の人間に話しかけた。
「貴様ら勇者か、その割には姑息な手を使いおって、恥を知れ」
「悪かったって、ここからはだまし討ちはしない。フォード、お前がやれ」
「はぁあ⁉どうして私一人でやらなければならないんだ?」
「スペチアーレは魔力少ないし、俺はオークをほとんど討伐した。何もやっていないお前がやるべきだろ」
「っっく、分かった」
オークキングは中位悪魔だ。フォードの実力ならば、問題なく勝利を収めることが出来るだろう。スペチアーレは、未だ残る疲れから戦闘ではほとんどとして役に立たない。申し訳なさそうに、自身の不参加を伝えた。
「すみません、フォードさん。私もまだ戦闘に参加出来そうにありません」
「いや、気しなくてもいいさ」
魔力に余裕を残し、疲労を感じないサナに対して、怒りを感じながらもスペチアーレを気遣う。
気だるげな瞳でフォードとオークキングを見比べるサナは、どこか他人事の様子だ。本当にフォードに興味を持っていないのだろう。実力で言えば、フォードが負けるとは思っていない、だが、フォードがここで死んでしまったとしても何の感情も湧かない、これがサナの心情だ。
「一人でこの私を相手取ろうとは、笑わせる。この男を殺したら次は貴様だ」
オークキングは目の前のフォードを強敵とは認識していない。随分と前からこの洞窟を根城にしているが、勇者は攻め入ってこなかった。その事実が、勇者一行の強さを誤認させてしまった。勇者は弱者であるが故に我々に攻撃を仕掛けてこなかったと・・・
「へいへい、だけど目の前の敵に集中した方が良いぞ」
オークキングは、意地汚いオークとしての雰囲気を持ちながらも、王者のような高貴さを秘めていた。キングの名に相応しいオーラを持っていたが、力は持っていない。ほんの数分後に、オークキングは思い知ることになる、自身の力が目の前の人間には通じないと言うことを。




