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臧否の禍時   作者: まるサンカク四角
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オークの根城

次なる拠点、ドラム村を目指して歩みを進める勇者一行。唯、初日は正午過ぎに出発したため、ほとんど進むことなく、太陽が沈んでしまった。太陽が沈んだことで、周りの景色は、薄暗くなっており、明かりは焚火と夜空の無数の星々だけだ。幻想的で美しい風景に、まるで他の世界から切り取られたような、勇者パーティの嫌悪渦巻く関係。その対比は、実に不可思議なものであった。


「明日は、最短経路から外れてオークの根城に向かう」

「サナ君、最初の遠征は、主に壁外の現状調査だ。わざわざ寄り道をする必要はない」


フォードにとって、魔物の討伐など興味はない。ただ勇者のメンバーであるという名誉と国からの莫大な報酬が欲しいだけだ。わざわざ危険を冒したいとも考えていないし、壁外の住民を助けたいとも思っていないのだ。


「フォードはそう言っているが、スペチアーレ、お前はどう思う?」

「予定より1日早く出発したのだし、遺憾ではあるけど私もオークの討伐に向かうべきだと思うわ」


サナは、少しだけスペチアーレに感心した。やはりこの娘は、根は良い子だ。人々を救いたいという心を持ちながら、アシハラの貴族や王族、過去の勇者たちによって傀儡になっているだけなのだ。


「っっ、分かった」


フォードは、スペチアーレがサナについたことで自身の意見を通すことは難しいと判断したようだ。素直にサナに同意した。


翌朝、勇者一行はオークが住む洞窟へと向かった。洞窟についたのは、凡そ午前10時頃だろう、気温が少しずつ上がり、身体が少しずつ温まってきた。暑くもなく寒くもない、戦うには最適な温度だ。


「それにしても、オークの根城の所在を知っているのに、なんで未だにオークが討伐されていないんだろうな?」


サナはフォードに向かって皮肉を飛ばす。「お前らの職務怠慢を知っている」その意味を孕んだ言葉を投げかけたのだ。フォードは苦虫を嚙み潰したような表情をしていたが、尤もらしい反論をした。

「我々も討伐に向かおうと考えていたが、情報が足りなかったんだ」

「情報は確かに大事よ、フォード達は悪くないわ」


スペチアーレはフォードの矛盾した意見を理解できていない。フォードは情報が無かったからオーク討伐を行わなかったと言っていた。だが今現在、フォードは一切の情報が無いにもかかわらず、討伐に同行しているのだ。昨日の時点で、自身の怠慢を詰めれると考えていなかった故の、フォードの矛盾した答えだったが、スペチアーレはマスタングに陶酔している、さらにはマスタングに同行していたメンバーにも敬意を持っている、その敬意が彼女の思考を妨げているのだ。


「そうか、ならいい」


サナは呆れたような失望したような声を漏らし、洞窟の入り口に向かっていった。太陽の光すら届かない暗闇、洞窟の入り口はまるで、訪問者を丸のみにしようとする蟒蛇のようだった。


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