ジャック・オー・ランタン決着
ジャックが放った火廻りによって、ジャックとサナだけの空間ができた。ジャックの炎は地獄のもの。今のフォードとスペチアーレではこの炎を突破することは不可能、よってサナとジャックの一騎打ちが決まった。
「気が利くだろ俺様は~、足手まといがいちゃ本気で戦えねぇだろ」
「それはそうだ、礼は言っとく」
ジャックは、サナに対して怒りを感じていたが、雑魚に勝負を邪魔されることの方が嫌だったようだ。
「魔薔薇火!」
火廻りによって生み出された炎の檻から、火の玉が無作為に飛んでくる。疎らに飛んでくる火の玉を躱しながら、ジャックの攻撃も躱していく。パワーアップしたジャックの攻撃に防戦一方になってしまうサナ。
少しの間、防御に徹していたサナではあるが、ジャックの動きと火の玉の速度や弾道を少しづつ予測できるようになったようだ。こうなれば、目で見てから攻撃をかわす必要が無くなるため、攻撃に転じることが容易となる。
一気に距離を詰めたサナは、宝剣をジャックに向けて振るった。だがジャックも相当の実力者である、瞬時に回避行動をとった。ただ完全には避けきれず、先ほどと同じように腕が切り落とされた。
「無駄だ!俺の体は何度でも再生すっっ!、なんだ、腕が再生しねぇ!」
「不思議か?再生しないのが」
「何をしやがった!」
「この剣は持ち主の能力を反映する。俺は今この剣に海の力を付与した。塩水は植物を腐らせるんだよ」
サナの剣が深海のような深い青色になっていた理由だ。ジャックが植物系の悪魔であることを理解したサナは、このために宝剣を用いたのだ。
「知ってるか?生物は体の一部が無くなるだけで、動きのバランスが取れなくなる。もうお前は終わりだよ」
「くそがぁぁぁ!」
ジャックは最後の悪あがきに、巨大な火の玉を創り出しサナに放った。だが悪あがきは悪あがきだ。魔力量はサナが上、更に海の力を付与された剣を使っているのだ。火の玉は見事に両断され消滅した。
「じゃあな」
サナは、うまく体を動かせないでいるジャックを頭から股間まで、見事に切り裂いた。勝負はジャックの腕を切り落とした瞬間についていたのだ。
「ちっ!俺様が負けるとはな~、まぁあれだ、楽しかったぜ」
ジャックは、久しぶりに本気を出せたことに心地よさを感じていた。怒りと歓喜が織り交ぜられた闘いに、ジャックは充足感を得ていた。ジャックは死ぬ間際に、戦いの興奮を感じていたようだ。表情の無い顔から、楽し気な声を発すると同時に、ジャックは枯れ死んだ。




