ジャック・オー・ランタン2
「テメェの剣じゃ、俺様を倒すことなんてできねぇんだよ!」
「確かにこの剣じゃ、最上位悪魔には有効打にはならいか」
サナは、そう言うと剣を納め、替わりに、腰に挿してあったもう一つの剣、宝剣を抜いた。刀身は、国王に授かった時とは違い、深い青黒い色、深海のような色を放っていた。
「なんだぁ、その剣は」
「お前を殺し損ねたら魔族に情報を渡すことになる、そう簡単に話すと思うな」
「つれねぇなー、俺は眷属の証について話してやったろーが。てかよぉ、なんでテメェが俺に勝てると思ってんだぁ!」
怒りの声と共に火の玉を浴びせるジャック。その攻撃は、先程までの攻撃をはるかに凌ぐ。草木は燃え、黒煙が天に向かい上っていく。しかし、突如として、火は消え去った。
「どうゆうことだぁ、俺様の火は、水をかけても消せねぇ地獄の炎だぞ」
「戦いを左右するものは、魔力と技術、そして経験だ。お前の火が消えたのは、単純に俺がお前の魔力を上回っただけのことだ」
「そんなことあるわけねぇ!俺様は最上位悪魔だぞ!人間如きが越えれるわけがねぇだろが!」
ジャックは、大声で喚き散らした。その声は、この場から遥か離れたサド村にまだ響き、天を貫くか如く鋭い声音であった。
「舐めるなよ、人間が!」
ジャックは怒りが限界に達していたのだろう。サナのことを人間と呼ぶようになっていた。
「舐めてはいない、ただの事実だ」
この言葉にジャックは、今迄に感じた事のない程の怒りを抱いた。それはもはや、怒りとは別の次元の何かと言えるほどのものだ。
「初めてだぜ、こんな感情はよぉ。怒りが頂点を越えると、こんな感情になるんだなぁ……ハハハハハ!いいぜ!テメェは絶対殺す、俺様が殺してやるよ!」
ジャックの端正で美しい顔に、何処からか出てきた植物が巻きついていく。その植物は、顔を全て飲み込むと、その後、上半身から下半身まで全てを覆い尽くしていった。やがて、その植物は形を変えていく。先程と同じ人型のようになっていくが、一つだけ全く違う部分があった。頭が人の形ではなく、カボチャのような形になっていったのだ。そのカボチャのようなものに、目と鼻と口の形の穴ができ、その穴から見える先には青い炎が灯っていた。まるでジャック・オー・ランタンのような姿だ。
「それがお前の本性か」
「あぁ、これが俺様の本来の姿だ。光栄に思えよ、この姿を見た人間は一人としていない。そして、絶望しろ、今の俺様は先程とは別物だ」
「確かに魔力が大分上がったな」
ジャックは先程のように無数の火の玉をだす。だが、その火の玉は蒼く揺らめいていた。魔力の向上によるものだろう。
「これでテメェは終わりだ!」
火の玉を投げようとするジャック。だが、ここで二つの声がその動きをを止めた。
「何者よ!あなたは!」
「一体どういう状況なんだい!サナ君、」
スペチアーレとフォードである。サナとジャックの最初のコンタクトの際に起きた、大地を破壊する音に気づき追いかけてきたようだ。
「こいつは東の災害と呼ばれる悪魔だ。来たから応戦している」
「なっ!そんな大物がこんなところに来るわけなでしょ!」
「嘘じゃない、先日のヴァンパイアの主人らしいぞ」
「それで仕返しに来たということか、いや、だとしたらおかしいぞ。サナ君一人で戦える相手じゃないはずだ」
「実際に俺は戦えている。マスタングまでの勇者達とは、俺は違う」
サナは状況を簡潔に説明しながら、目線は常にジャックに向いている。それに対し、ジャックもサナから目線を外さない。スペチアーレとフォードは弱者だと判断したようだ。
「外野のせいで止まっちまったが、初めるぞ!サナ!」
「ああ、かかってこい。ジャック」




