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ねぇ、メガネかけない?  作者: 時帰呼
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第壱話 転校生と坂と神社と

こんにちは。

今回から、全四話で 恋愛要素少ないですが、ほのぼの青春ドラマを お送りいたします。


ずっと変わらないと思っていた毎日に ちょっとしたエッセンスが加わることで、大きな変化が生まれたりするのです。


さて、はじまり はじまり…



第壱話『転校生と坂と神社と』




漫画なんかでさ、よくあるじゃない。

ほら、あれだよ。あれ!


いつもは、目立たない 地味ぃ~な女の子がさ、メガネをとると 実は 滅茶苦茶 可愛かった♪…ってやつ。


あれってさ、おかしいよね?


だってさ、メガネをかけてるってことはさ、たいてい近眼じゃない。


…て、ことはさ。


メガネっ娘ってさ、 他の人から見ると、実際より 眼が大きく見えてるってことじゃない。


だから、メガネをとると、眼が ちっちゃくなっちゃうってことじゃないの?


…って、ことは……



*****



なんだか知らないけれど、 最終学年になってクラス替えがあったというのに またまたコイツの隣になってしまってから、私の気の休まる時がない。


あー、神様! あなたは、なんて悪戯好きなんでしょうか?



かく言う私は、『海野夏子 17歳』

今年の春から 愛知県立 水戸浦和高等学校 三年に進級した、来年春には 人生の大きな節目を迎えるバリバリの受験生。



あぁ…、隣で わけの分かんない熱弁を奮っている奴ね。


あ、やっぱり気になる?


いやいや、そんな意味じゃなくてさ!



こんな奴、全く知らない……と言いたいところだけど、


実は 小学校どころか 幼稚園から ず~

っと 一緒の教室に 気がつくと 何故か居るという、俗に言う『腐れ縁』、


もう少し綺麗な言い方で言うと『鎖縁』て言うらしいけど。


周りから、そう言われて迷惑しているんだけどさ。


この偶然の連発は、そんな言葉では 言い表すことができないと思うんだ。



こいつは、幼馴染みの 『川畑洋平 18歳 』 7月1日生まれだから、既に誕生日は過ぎてて、今現在は 癪なことに 私より ひとつ歳上になるわけだ。


うえぇ!? 「なんで誕生日まで把握してるの? もしかしてぇ? 」って、


止めてよ!! それ、悪い冗談って言うか、言って良いことと悪いことがあるって 知ってる? 真央ちゃん…、



あ、真央ちゃんで良いよね?

もう こんだけ話してんだから。


今日 転校してきたばかりだけどさ


駄目?



あ~、良かった!

私ってさ、馴れ馴れしいじゃん。 だからすぐ失敗しちゃってさ、あちゃー! またやっちゃったかな~って……、



あ、そうそう。

洋平のことだったよね?


さっき、言ったじゃない。 幼稚園から一緒だったって。 幼稚園ってさ、毎月 その月生まれの子 まとめて お誕生日会って、やるじゃない。


え? やったことない!?

あれって、全国区の行事だと思ってた……。




あぁ、洋平のことね。


だからさ、ここら辺じゃ、幼稚園や小学校の低学年なんかで、毎月 お誕生日会をやるわけ。


で、もう何回もやってるから、覚えてるってだけで…。


あ、ねえ ちょっと 洋平!

私の誕生日知ってるよね?


えええ!?「知るわけねぇだろ!!」って、お前!! あとで覚えてろよ!!


いや違う、あとで誕生日 教えてやるって意味じゃないっつうの!!



ね? 腹立つ奴でしょ?


あああ、真央ちゃん! なに笑ってんのよ!!

こっちは、真剣に話してるんだからね。

ちゃんと聞いてくれなきゃ、怒るよ…もう!


え~っと、なんの話だったっけ?


うん そう、だから変な奴なんだって、洋平って奴はさ。


俗に言う『メガネフェチ』ってやつ?

あいつったら、ソレな訳。


で、ずーーーっと煩いのよ。

私に メガネ かけてくれよって。


真央、私の視力 知ってる?

左右両目ともに2.5だよ。 バリバリに見えるっちゅうの!!


なんで、メガネ…


あれ? 私、なにかやらかした?



えええええっ!? 今、私 真央ちゃんのこと、真央って呼び捨てにしてた?


ごめんっ!! 謝る!!


え? 謝んなくていいの♪


てか、むしろ 呼び捨てにしてって……

くぅぅう…、泣かせるなぁ、真央ちゃん 優しすぎるわ。


え、だから呼び捨てにしてって…


あらたまって言われても…真央……、


これでいい?


ひゃ~、なんか照れるな♪


私のことは、じゃあ、夏子って呼んで。

いや、なんだったら 夏!でもいいよ。


え? それは無理だって?


じゃあさ、私が 真央を真央って呼んで、真央は夏子って呼び合うことにしよ♪ それならいいでしょ?



それでさ、真央。

洋平の奴が しつこいのなんのって、小学校の時から ずーーーっとだよ。



私に メガネ、かけない?って言ってるの。 キモくない? 小学校からだよ。


えー、仲良さそうで 羨ましいって?


それはない! それはないって!

ただ、付き合いが長いだけだってば…


あ、誤解しないでね。別に そういう意味じゃないから。




あ、先生 来た!!


じゃ、学校 終わったら 一緒に帰ろ。

そん時、もっと話せるから♪




*****




天気晴朗なれど波高し…ってね。


愛知県 水戸浦和市は、小高い山々に背後を囲まれた 狭い土地が海沿いにつづく街だ。


お陰で 朝夕には、海風と山風が必ず吹くという ある意味 セーラー服女子には 大変住みにくい街である。


まぁ、それ以外には 渥美半島と知多半島に囲まれた三河湾に面し 豊富な漁場をもつ 温暖な土地だから、狭っくるしいのと 坂が多いこと、それから夏に水不足になることを除けば 住みやすい土地なんだよね。


…と、メタ視点で 解説している場合じゃないんだった。



7月11日 間もなく夏休みに突入するという炎天下の学校からの帰り道。 わたくし…海野夏子は 自転車を ひーひー言いながら漕いで(走らせて)いた。


その後ろには、今日 転校してきたばかりの山野真央が 涼しい顔で 電動アシスト自転車で ついて来ている。


しかも、内装5段の変速機内蔵型というから ほぼ原付じゃないの? これってレギュレーション違反じゃないの? 反則だよねっていう代物だ。


世の中に こんな不公平が あって良いものかと 内心 私は思った。


だがしかし、世渡りの仕方も 多少は覚えた年頃の私は、


「あはは…、すごいね♪」


としか、言えなかった。


これぞ民主制資本主義の生み出す格差社会というものか…と思いながら。


実は 我が校では 坂が多い土地柄ゆえ、校則で 電動アシスト自転車は禁止されてはいない。


それどころか…



「お、夏子、頑張ってるね♪」


と 終礼が終わってからも 友達とダベっていて、私たちより うんと(とても)遅く校門を出たはずの 洋平の奴が、原付バイクの ボボボボボという排気音を響かせて 追い付いて来やがった。


くわぁ~! なんて嫌味な奴なんだ。




「夏子…、大丈夫?」


真央が 心配そうな声を 掛けてくれたけれど、放課後に 我が愛する水戸浦和の街を案内すると言った手前 弱音を吐くわけにもいかない。


「ははは、大丈夫 大丈夫♪ 毎日のことだから…」


うん、もう ひと踏ん張りだ。

この急坂を登りきれば、あとは海沿いまで 下り坂が続くのだから…大丈夫 大丈夫と 自分に言い聞かせる。



「よぉ、夏子。 しんどかったら 俺の肩に掴まってくか?」


「えっ! マジ!?♪」


要は 洋平の肩に掴まって 原付で 曳いていってやろうかって話なんだけど…、


「あー、けど、やっぱ マズイよな。 道交法違反になっちまうから♪」


くっそ! 最初から そのつもりだったのは 分かっていたけど、つい ノッてしまった。


「んじゃ、あと少しで下り坂だ。 頑張れよぉぉ~~~♪」


ボボボボボボボボ……!


洋平は エンジンを吹かすと 排気ガスを振り撒いて 走り去って行った。


ええぃ 覚えてろよ!!…と叫んでやろうとしたが、排ガスを吸って ゲホゲホとむせてしまって 声も出ない。



「夏子、ほんとに大丈夫?」


真央が 並走しながら、声を掛けてくれた。


「あはげほ、はははげほは、だ…大丈夫。

でも ちょっと疲れたから、そこの神社で ちょっと休憩していこ 真央」


夏休みも近い金曜日の午後、すでに真夏のような陽気の中で、さんざん洋平の奴にからかわれて 私の体力も いいかげん限界みたいだった。




我が 愛知県立 水戸浦和高等学校から つづら折りの坂を200mほど下り、そこからは あろうことか300mもの急坂を登った先にある青海峠に 1200年もの歴史を誇る 由緒正しき『宗像神社』(むなかたじんじゃ)が鎮座している。


出来ることなら、せめて この青海峠辺りに 我が校が建てられていれば 登下校の苦労も ずいぶん軽減されるのだけど、


いかんせん 先客として神様の御住まいが建っていたのだから、御立ち退きくださいとも言えずに あろうことか 街からは 一山越えた山の中腹に 我が校は 大正末期に開校されたのだった。


これも土地の狭い水戸浦和市ゆえの悲劇のひとつだ。




私と真央は ようやくのことに神社に辿り着くと、乗ってきた自転車を参道脇に停めてから 石造りの鳥居をくぐった。


へろへろになりながらも 鳥居の前で 深々と頭を下げて 神様に御挨拶。


都会ッ子の真央も 私の仕草を真似て ペコリと頭を下げていた。



いつもなら手水舎(ちょうずしゃ)で 手を清めるところだけれど、神様に ごめんなさいをして 今日は ちょっと省略…。


ふらふらとおぼつかない足取りで 古びた木造の社殿前に ようよう(ようやく)辿り着き、なんとか 二礼二拍手一礼をすると 社殿前の石段に トスンと腰を落とした。


真央も 罰当たりな私の行動に戸惑いながらも 私の隣に腰を下ろす。




神社を囲む杜の樹々の間を抜けてくる風が ひんやりとして心地よい。


蝉がジワジワと鳴きわめいているのも このロケーションならば それほど煩く感じない。


すーっと汗がひいてゆくのがわかる。



ふぅ…っと 息を吐き出し また胸一杯に空気を吸い込むと、身体の芯から浄められたような気がするから不思議だ。



ジワジワと絶え間なく蝉が鳴いている。



真央は 私の息が整うのを待ってくれているのか、黙ったままで 樹々の間を透かして降ってくる木洩れ日を見上げていた。





「ねぇ、真央は いつから眼鏡をかけてるの?」



「え…? うーん、いつからだったかな? たしか中学1年の夏休み明けからだったと思う。

ずっと黒板が見にくいなって思ってたんだけど、中学の新入生健康診断で 視力が0.6しかないことが分かって…、それで眼鏡をかけることにしたんだ」


真央は 少し下がりかけた 大きめの丸縁の眼鏡の位置を直しながら、唐突な私の質問に 戸惑いつつも 答えてくれた。



「変かな?」


真央が 私に尋ねた。


「いや、そういう意味じゃないよ。 その眼鏡…、とっても真央に似合ってて可愛いと思うよ」


「えっ…、そんなことないよ」


途端に 真央の頬が赤くなるから 余計に可愛い。


「ただね…」



「ただ…?」



「うん…、ただ 洋平が好きそうなのは こんな感じの眼鏡ッ子なのかなと、ちょっと思ったりして……、ハハハ」



私の その台詞に、真央が なにやら考え込んでいる顔をした。



うむ、これは ちょっとマズったかな?


…と、少しばかり焦った私だった。




to be cotinued……


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