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『お月様の月への手紙』  作者: 朔太郎
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『すやすやと眠れるように』

拝啓

 昨夜はよく眠れましたか? お風呂上りで暑いと言って扇風機を使って髪を乾かしてませんか? 初夏とはいえその部屋は外に比べるとまあまあ気温が低いので、また先日のように突然熱が出るんじゃないかととても心配してます。君はあのとき「緊張のせいで熱が出たの」と言ってくすくすと笑っていたけれど、「あれ、家の鍵しめたっけな」と駅に着いたときにふと思うように、そして君が僕の偏食のことをよく心配しているように、僕はいつも何かの折に君のことを心配してます。寒暖の差と体調不良との関連性についての講釈や考察なんていうのは、毎日のように散々伝えているからさすがに煩わしいかもしれないけれど、我慢強いところのある君を思い出すと、やっぱりいつも通り気にかけずにはいられません。だって、まだこちらも夜になると少し肌寒いから。……ちょっと心配し過ぎかな? お酒のこともだけど、心配することが癖になっているかもね。

 まあ、とはいえ僕もひとのことをどうこう言えるような生活を送っているわけではないんだけど、最近は、たばこを控えてみたり、意識して野菜を食べてみたり、歩く距離を延ばすために一駅前で降りてみたり、次の日が休みであっても早めに布団に入ってみたり、と健康のために少しづつ身体の改善に努めてます。目に見えて何かが変わるというわけではないけど、満員電車でお年寄りに席を譲るように、何もしないよりはましなんじゃないかなって思うんだよね。そう思わない?  

 何か健康の話ばかりしてると、まあまあ歳をとったように感じてしまうけど(こんなことを書くと、君がまた自分の年齢を気にして 「わたしの方が年上だけど大丈夫?」と質問するかもしれないけれど)、これから先例え歩けなくなっても、例え言葉が話せなくなっても、君の素敵な笑顔が見られるだけで、多分僕は一生天気の良い日曜の朝のような穏やかな気持ちが続くんじゃないかな、と思ってます。年齢について強いて何かひとつだけ言うとしたら、もっと早く出会えていれば、その分もっと一緒に居られたなということくらいです。だからその点の心配だけはもう必要ないからね。


 こちらは雨の音が聞こえます。

 そちらはどんな音が聞こえるかな?


 君がすやすやと寝息を立てながら寝ている姿を想像して今日は眠りにつくことにします。

 おやすみなさい。 敬具


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