6 ~森の怪異~
11月2日。A班は、書き込まれた地図に従って、見張り小屋を探した。見つけた通り道は、書き込みのとおりに、低木や背の高い草やらが道をふさいでいた。
確かに、小屋の屋根は見えるが、道具がなければ近づけないのも納得がいく有様だ。それぞれ、のこぎりで切り落としたり、枝をはらったりして、少しずつ道を開いて、夕方になる少し前になんとか小屋の玄関前にたどり着いた。
小屋の周りを囲う低い柵は低木などに飲み込まれつつあり、崩れかけた一部が見えるまで柵がある事すらわからなかった。
小屋は、本当に、家よりは少し大きめに拡張した倉庫に台所や風呂場などの小さな水場ををくっつけたような感じであった。壁のあちこちに板が打ち付けてあり、そのひとつが玄関だった。
窓がある一室だけ、普通の家の居間のようにカーテンやじゅうたん、箪笥、テーブルが置かれている。窓際に安楽椅子があり、かろうじて朽ちずに残った布切れの柄で男性だと分かる骨が座っていた。そばには雑誌や新聞が散らばっていた。日付は10年以上昔のものだ。
裏口から出ると、煮炊き用の薪らしき木材と、何か分からない石のようなものが積み上げてあった。モーリスが、石を調べて、磁力を発しているようだと言った。
よく見ると、小屋の中にはほぼ電化製品が置かれていないようだった。時代的には既に初期のものが売られていたものでさえ、旧式の機械だった。
例えば、冷蔵庫は氷をつかって冷やすタイプで、一番年長のジャックでさえ現物を知らないような古めかしいものだ。
草を刈りながらよく観察すると、庭には柵の根元など、あちこちに同じような石や鉄くずなどが固めて置いてあるのが分かった。その理由は、安楽椅子のそばの机に隠されていた。ボロボロの日記帳があり、そこに、『にじいろの主』を避けるためだとある。
日記帳は、はじめから半分ほどが、年に数回ずつ書かれている事と内容のほかは変わったところのない日記が書かれていた。
反対側のページから開くと、先ほどの記述と、湖のそばに住む『豊穣の神』に遭遇した場合の対処法が書かれていた。
対処といっても、何か人間大の生き物を差し出せ、というもので、一人が死ねといっているようなものだった。独特のにおいがするというのと、湖のそばしか現れないということが救いであった。湖の近くを通るときに、においがしたら遠ざかればたぶん大丈夫だろうと6人は結論付けた。
残りのページはところどころに独り言のようなものが短く書かれているほかは白紙であった。石と低木のサンプルをいくつかと、机の隠し引き出しにあった赤い宝石のペンダントを6人は持ち帰った。
森を出ると、あの笑うがいこつも居るのだろうか、いくつか寝袋のようなものが並んでいた。それを囲むように他の班の者たちが立っていた。大学生2人とナオミとジェイコブはさっと十字を切った。他の班の一人が手を合わせ、お経を唱えているのを聞きつつ、6人は屋敷の者に持ち帰ったものを託した。