4 ~わたぼこりの話と森~
綿状の生き物の主張と最近の動向を、アンブローズ氏は伝えた。綿状の生き物の一部が井戸の中の何かに汚染され、いつの間にか森の中に棲み着いたおぞましい生き物と結託して森を広げようと考えている。
さらに、数日前に遊びで森に入って行方不明になった若者がおり、同行者は恐ろしい目にあって精神病院から一生出られない精神状態にあることから、何かが森に住んでいることは間違いない。
森を拓く前にその実態を把握し、生き物の捕獲や駆除をし、井戸の汚染の原因であるという言い伝えの隕石を井戸から引き上げ、浄化する対策が必要だ。そうしなければ、街の人々はその恐ろしい生き物や汚染された生き物に食い殺されてしまうだろう。
11月1日。ハロウィンの売れ残りの菓子を買い占めながら、候補者達は森の探索の支度をした。渡された地図には、井戸の位置だと推定される場所に大きく×印がうたれているほかは、細い道が一本と、わき道があって小屋があった場所があるはずだと注釈があるだけだ。
10人を越える候補者達は5人前後に3つの班に分かれた。A班はあの科学者と恰幅の良い壮年の実業家、若い女性(ナオミを指している)とその出身大学から来たというひ弱そうな青年とその友人、そして白髪交じりの男(ジャックを指している)の6人である。
A班は名前と動機くらいの軽い挨拶ののち、装備をつめたリュックサックを担いで、錆付いた門扉を通り抜けていった。
森は木々が空をふさぎ、黄昏時のような薄暗さであった。元々そこまで明るい天気でもなかったが、あまりの変化にまるで気温まで下がったように肌寒さを覚えるのであった。工場で着るような作業着の反射素材が光で少々ちらつくのも、木々の密度が薄い場所だけだ。
ひ弱そうな青年と友人が最初に根をあげてしまい、6人は菓子と共に買ったサンドイッチをほおばった。それが済むと、壮年の実業家ジェイコブが、本当にそんな恐ろしい生物がいるのだろうか、と呟いた。確かに、薄暗いだけでまだ何も変わったものは見られない。
しかし、まだ昼食を終えて一時間もしないうちに、6人は悲しいものを見てしまうのだった。
小屋とは別の、偶然見つけた獣道の先に、上れそうな枝振りの木があった。見上げると、下からいくつめかの枝に、首に紐が掛かったがいこつがふたりぶん下がっていた。顎がはずれかかって、まるで笑いあっているようだった。誰からともなく、6人はもとの道まで走った。ナオミは半分泣き顔で、ジャックと科学者モーリスが気遣うように、立ち止まりそうな彼女を励まし、慰め、歩ませた。