9 ~それから~
ナオミとジャック、それから数人は、森の入り口近くの土地を安く手に入れ、そこに住処を持った。
彼らの土地以外に森を拓く事は、少なくともモーリスの研究が進むか綿ぼこりどもが騒ぎ立てなくなるまでは決して行われないだろう。
森を買い取るために用意されたジェフリー氏の資産で家々を建てるための諸経費はまかなわれた。モーリスは研究所兼住宅を建て、綿ぼこり数体と共に暮らし始めた。彼は森が完全になくなるまで研究を続けると宣言し、アンブローズ氏の信頼を得、ジェフリー氏の頭痛の種になった。いつかあの井戸の怪異を完全に葬り去るつもりらしい。
ジェイコブは商業施設をつくる事業を諦める代わりに、町の大型店を買い取ってオーナーになった。何人かは東海岸の著名な精神病院で残りの生涯のほとんどを過ごすことになるだろう。
あれから数年が経った。ナオミは遠い支社へ転勤になり、あの森の家はレンタルハウスとして人に貸して賃料を取って副収入にしていた。ジャックが病死したくらいで何事もなく、モーリス以外の皆が、あの森のことを考えなくなっていた。なので、ナオミは三面記事の片隅など、気に留める事はなかった。
『11月8日XXXX州郊外の町レインボウスプレッド市在住の資産家ジェフリー・レインボウウィード氏が自殺していたことが15日の正午ごろに公表された。書斎から遺書が発見され、遺産の全てを近隣に住む生物学者サイモン・モーリス氏に相続させると書かれていたため論争が巻き起こっている。ジェフリー氏には妻と3人の息子1人の娘がおり、妻と長男が裁判所に仲裁を求めている。モーリス氏は、妻と子供たちに遺産の8割を相続させ、残りの2割を受け取れればいいとだけコメントしている。』
記事から数日後、ナオミの元に、モーリスから手紙が届いた。そこには、夕暮れの森の湖に足をつけるおぞましい何かや、鱗と鰓が生えた人間の横顔など、奇怪な写真の数々が同封されていた。
そして最後に、彼女には懐かしいアーカムの大学の敷地にある記念樹の下で図書館長とモーリスが写ったものが入っていた。その写真だけ、裏に走り書きがあった。
もう、あの家には帰ってはいけない。次に僕からの手紙が届いたら、その教授に全て渡してくれ。
(・ω・)もし、クトゥルフ神話TRPGのルールブックをお持ちでしたら、シナリオで遊んでみてくださると幸いに存じます。どんな探索者が集まるでしょうか?結末は明るくもなりますし、救いのない終わりがまっているかもしれません。