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序章
「あの与謝野の……息子さんですか?」
「そうだ。そいつが今度ウチの一課に入る」
「えーっと……。色々質問があるんですけど、どうしてそんな深刻な顔で言うんですか?」
「いや……。俺もちょっと信じられないと思っているからな……」
「はい?」
ある警察署の公安部一課の事務所で、部長の金司と部下の女がそう話していた。その言葉が朗報なのか悲報なのかは、定かではなかった。
金司は女の肩に手をポンと叩き、ため息をつく。
「まぁ、近い将来同僚になる社員だ。仲良くしてやってくれ」
「い、いや。そんなこと言われましても……」
「気になるんなら自分で調べたまえ」
背中を見せる金司に、女は身構えて聞いた。
「じゃあ、名前を教えてくださいよ」
わずかに女に顔を向け、金司はハッキリ名前を申し上げた。
「与謝野佳志だ」