衣服
「大事な話があるんだ。」
俺はリューの肩に手を置いて、膝をおとして目線をあわせる。これから彼女にお願いしようとしていることは、断ってもらっては困るのだ。
「頼むから服を着てくれ~~~~っ!!」
「ん~~ん。」
断られました。
「服っていうのはね、文明人なら着るものなんだ、だからねリューちゃんにも着て欲しいんだ。それに服着てたほうが可愛いと思うし♡」
「うっわ~~ すっごく胡散臭い。」
「お姉さま、お願いですから協力してください。」
リューちゃんも、こくこくと頷いているし・・・
「ん~~~~っ!!!」
こちらの言うことよりも、リューちゃんのほうが伝えたいことがあるらしい。手をぶんぶんと振っている。
顔をしかめているところから、まだ口の中が酸っぱいらしい。
よし、こういうときは交換条件だ。
「じゃあ水を用意するから、服を着てくれるよね?!」
「ん~~~」
川のほうに目を向けている。
水なら、いくらでもあるのだ。
「お~ね~が~い~だ~か~ら~」
これ以上、全裸の女の子を連れ歩くのは、精神的に、辛いのだ。
「これ以上、裸見せられると襲っちゃうんだって。」
「なるほど、やっぱり!」
姉と姫が俺を犯罪者予備軍と認定する。
味方がいないどころか、十字砲火である。
「ん~。」
何か考えているようだ。
皮膚の表面に膜が張り、桃色に変わる。
競泳用水着ぐらいだろうか。
「できるなら、できるなら最初からして下さい・・・」
「できるよ~」
「かんたん~」
「ほらほら~」
精霊ちゃん達も服を・・・
「影ちゃんっ!!」
ボンテージは許そう、でも隠すべきところを露出してはいけません。
他の精霊ちゃん達はビキニタイプの・・・水着というより下着っぽいデザインに見えるが、多くは望むまい。
「できるなら、できるなら・・・」
なぜだろう、涙が・・・
俺は、リューちゃんに着せる予定だったズボンを穿く。シャツは左腕だけ通す。
文明ってすばらしい。
「《そういえば姉ちゃん、姫様と話してるけど言葉わかるの?》」
「言葉わからなくても、何言ってるかだいたいわかる。」
「ですわね。」
女子のコミュ力 スゲェ~
「水!」
スライムを倒すのに使った土鍋に、水を注ごうとするのだが、魔法陣にオッサンにスライム戦、MPか体力かわからないが、そろそろ限界・・・
なんとなく川を見て気づいた。水を発生させるのではなく、操ればいいのだ。
川の上から水蒸気を集めて露結。
・・・疲れた・・・
しかし、なんとか一杯分。
リューちゃんが、あっさりと飲み干す。どこに入るんだろう。
底にナイフが転がっている。スライムは、召喚したのだろうか、それとも柄の中に入っていたのだろうか?
中に入ろうとして・・・
「ぐえ・・・」
襟がつかまれる。
「あれ駄目。」
いつの間にか俺の背中にユシルちゃんがいる。
「触っちゃ駄目。」
「ユシルちゃんいつのまに・・・」
「ずっと居た。」
「え?」
「ずっと居る。」
ナニソレ、コワイ・・・
右手に刃を出して、ナイフの柄を下から三分の一程切る。簡単に切れる。さすが未来兵器♥
ついつい撫でてしまう。
この武骨さがいい。
「好きだよなそ~ゆ~の。」
「うん。」
姉さんが、なにかをあきらめるような顔をしている。
ナイフを拾う。今度はユシルも止めなかった。
軽い。アルミニウムだろうか。
ファンタジー特有の不思議金属か?
ナイフは軽かったが、中空ではなかった。
柄に召喚用の魔法陣が埋め込んであったようだ。それも宝石のようなものを使ったタイプの。
ナイフはもらっておくことにした。
ありがとうございます。
まだ続きます。