蛇足
紅いドレスは深く胸元が開き、右側に入ったスリットは歩くたびに太腿が白く映える。
右腕は肩までしかなく、右腕には五つ黒薔薇の刺青が並んで、ドレスには白薔薇の刺繍が百十二ある。
「よ~ サドラのお嬢、まぁた別れたんだってぇ?!」
「セアラ様?! お久しぶりでございます。
父が泣いておりましたわ、相変わらず手厳しいと…」
「はっはぁ あたしゃ昔っからコソ泥だったからねぇ 金分捕るしか能がないのさ。」
「そちらはナブフォ様ですね、先日血液凝固を遅延させる成分の抽出に成功したそうですね。」
「これはサドラ伯御令嬢、わたくしのような乳鉢に過分な御言葉ありがとうございます。
ですがどうしてそのことを、まだ安全が実証できてないので発表していませんのに。」
「戦場で武器の確認をしない兵などいませんわ、とくに私は武器も男も新しいのが好ましいですから。」
「い~かげん落ち着きなよぉ、としぃとって一人はつっらいよぉ~」
「一人身を貫いているセアラ様がおっしゃると説得力がありますわね、考えさせていただきますわ。」
ため息をつく、本気で言って無いのがわかる。眼が腕の黒薔薇にゆく、いくらドレスに白薔薇を散らしても腕に刻んだ黒薔薇が重いのだろう。
黒薔薇が示すのは死者の数である。執刀して助けられなかった命の重さである。
彼女は助けられなかった命のせいで、医師を止めることが出来なくなってしまったのだろう。手術が成功した数だけ薔薇の刺繍をする権利があるのだが、失敗したからといって薔薇の刺青する義務など無い。
自戒としているのだ。
それが彼女の腕を支えているのかもしれないと思うと、少し切なかった。
医師薬師を支えているのは徴税局であり、長官のセアラであった。セアでは貴族らしくないので、セアラと呼ばれるようになったのだが、そのころから腹に余計なものが付くようになってしまった。
(困ったな、あの人には帰って来て欲しいけどこの姿は見られたくない・・・
でももう痩せられる気がしない・・・)
その頃その男は、別の異世界にいた。
最悪の未来が来てしまった、こうならないようティターニア様と話を付けるつもりだったのに、向こうが一枚上手だった。流石に長生きしているだけのことはある。
『ふぁさっ』
何かを被せられる。
「うわわわっ?!」
びびって転がる。
なんだこれ? 布の・・・ゴスロリドレスだ。
「聞こえてたんなら地球に帰して下さいよっ!!」
「なにいってんのよ、それ何?」
「着る? すっごい丈夫らしいんだけど?」
「悪趣味! だいたいそれどこから出したのよ!」
現在居る場所は洞窟の中、奥行き二十メートルぐらいの穴で入口は幻影で隠している。
ティターニア様について簡単に説明する。 「精霊の女王様で丸いオバサン。」
天井から岩が落ちてくる。
予測していたのでよける。
「ま、それはともかく膝を割って話すべきだと思うんだ。」
「へ? ちょ…ちょっとなにを・・・ 」
するりと膝を通り抜けてゆく下着。
「ひっ…ひざってまさか・・・ 」
膝頭に置いた手が、太腿を割広げる。
「なんでそんな慣れてるのよっ いっいやあぁあ~~ 」
一回戦。
二回戦。
三回戦・・・・・・不発。
先にイタした『みえるひと』の蛍ちゃんが睨んでいる。
「ずるい! あたしは一回だけだったのにっ! 」
「ちょっとぉ あたしが嫌がってたの見てなかったのっ!」
「嘘 あんなによろこんでいたくせに。」
「俺も本気で嫌がっていたらやめてた。」
「ずるいっ! 男っていつもそうよねっ!!」
「これからは私がするから、いつでもどんなことでもするからっ!」
「ごめんな、巻き込んで。」
またティターニア様なのか、それとも別の神・・・それに類する超越者なのかはわからないが、異世界に送られたのは間違いない。
その理由は前の世界での実績からだろう。 「お~い 終わったか~?」
姉ちゃんの声だ。洞窟の外にいるのには気付いていた。
答えを待たず入って来る。
「義姉さまっ! このたび・・・ 」
「あ~ いい、いい 」
軽く手で言葉を押さえると
「あたしもそいつの『女』だから。」
固まって声の出ない二人。
「そ、そんな、きょ~だいで・・・」
「血ぃつながってないから、ちなみに子供も三人産んでる。」
「そんな・・・ まさか・・・ マンホールに・・・ 」
わからない、いまの話の展開でなんでマンホールがでてくる・・・
「違うからねっ! 捨ててないからっ!
ましてやマンホールなんかにっ!!」
なぜ疑いの眼で見る。
「前の世界では俺達王族で、俺王様。
教育係も付けてきたし、クーデターも起こらないようにしてきた、まあ傀儡政権とかはあるかもしれんが、そこまでは知らん。」
「と、ま~ こ~ゆ~めんど~なやつだけどよろしくしてやってくれ。」
ありがとうございました。




