樹族
なんだかうんざりした気分になって尋ねた。
「ユシルちゃんもお姫様なの?」
「王位も王家も統治権も領地も税収もなんにもない。」
なるほど、姫というのは愛称の一種か・・・そういえばユシルちゃんて、背は伸びたけど胸は無いままだよな。
ユシルちゃんが視界の隅っこでハンドサインを出す。
「わかった。」
姉ちゃんの手が俺の頭を掴んで握る。
「痛い痛い痛い痛い痛い痛い!」
「まったく、どうしようもない男だな。」
「さっきからそいつ私達の胸ばかり見ていたぞ。」
だってダークエルフといえば巨乳のはずなのに・・・
「あんな貧相なの見てないで、あたしので我慢しとけ♡」
姉ちゃんの胸に顔を埋める、うらやましい? いいや、ゆるされた訳では無い。
何度か同じメにあわされた。
そろそろ息が苦しくなってくる。
一分経過。
二分経過。
三分経過・・・さっきまで姉ちゃんの腕を叩いて降参の意志を伝えていたのが、そろそろ肘に力が入らなくなってくる。
死ぬ・・・
「ハァ ハァ ハァアァ~~~~」
空気が美味しい、とくにこの森の空気は命の味がする。
ん、精霊ちゃん達が何かしている。
辺りを見回すと、樹に貼り付くようにエルフが顔を出していた。
精霊ちゃんの手の平の上に点に見える精霊が幾つかある。
息が落ち着いてきたので何をしているのか聞いてみる。
「子供ですわ。」
「私達の愛の結晶です。」
「久しぶりに会いました。」
「元気でなにより。」
何を言っているのだろう?
成長と共に話し方に個性が出てきた。
肉体関係を持っているが、妊娠したことはなかった・・・はずだ。
いや、まさか、しかし・・・ありうる。
「あのさ君達の妊娠期間てどのくらいなのかな?」
「二~三時間です。」
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声にならない叫び声が、俺の肺を満たす。
「いつ出産してた。」
「出産? しないよ。」
「直接精霊界へゆきます。」
「そこから能力と好運があり、望んだ者の元にゆくのですわ。」
「人族の元にゆくのはあまりおりませんね、やはり能力に恵まれた者が少ないようです。」
きいてはいけないような気もしたが、聞かずにいられなかった。
「何人ぐらい産んだんだ?」
「千十二。」
「千五。」
「九百八十。」
「千三十一。」
「千五百六。」
「千二十四。」
「三十八。」
せ、せんて・・・千だよな・・・
最後の三十八はユシルちゃんで、いつの間にか出産を終えていた。手に何か卵のようなものを持っている。大きさは鶏の卵の二倍ぐらい。
「それが・・・ えっと・・・子供?」
ユシルちゃんは頷くと、落ち葉を掻き分けて一つづつ埋めてゆく。俺と姉ちゃんも手伝う。だいたい三メートル間隔だ。
卵ではなくて種だったようだ。
「おしまい」
森の力というのは土壌の栄養分ということだろうか?
「あとはこの森が育てる」
「芽が・・・もう少し待たなくていいのか?」
「おしまい」
哺乳類の感性としては、なんだか無責任な気がするが、種族の違いは尊重すべきだろうか?
「悪いけど一つやって欲しいことがあるんだ。」
まだ続きます。




