惨敗
思っていたより崩壊は早かった。
巨大な上半身ゴーレムは無理に移動しようとしてあっさり崩壊した。もしどちらか半分しか作れないなら、俺なら下半身を作る。男なら当然、ではなくて、移動能力を重視するからである。
何らかの攻略目標があるとか、破壊しなければならない何かが存在するならばともかく、移動能力の無い魔獣では拠点防御にしか使えない。もしかしたら下半身も作る予定だったが、何らかの理由で失敗したのかもしれないのだが、戦は常に運否天賦だ、計算外の事態に対処出来ない側が負けるのだ。
崩れ落ちた時に魔族の兵が散らばり、それでも持っている弓を構えようとしたり、剣を抜いたリしているが、五体満足な者はほとんどいない。中には戦えなくなったため自決する者もいた。彼等には俺達人族が悪魔にでも見えているのだろう。日本にもそういう教育をされた時代があって、現代でも似たような教育をしている国家は存在している。
姉ちゃんが先頭に立って魔族を無力化してゆく、うぅ~つ妊娠してるのにっ!
風を起こして矢を跳ね上げる。
奥の方から痩せた魔族が這いだして来る。
俺を睨んでいる。俺だけを睨んでいる。
何かつぶやいている。
「・・・いなければ・・・ぉまえ・・・さぇ・・・ぃな・・・ければ・・・ 」
俺が睨み返すより速く、姉ちゃんが押さえ込む・・・俺、いらないような気がする。
持っていたナイフを蹴飛ばして、デルちゃんの刃で斬る。
斬った瞬間、怒りと憎しみと絶望が眼に満ちる。
俺はリューちゃんから降りて歩み寄る。
「王となる者は冷酷でなければならない。
冷酷に豊かな未来と、民の笑顔を目指さなければならない。」
「貴様に何がわかるっ!」
「わからないし、わかるつもりもない。
たとえばあんたの家族が、大切な人が人族に殺されていたとしても、あんたが人族に私刑されていたとしても、王とは、権力者とは、リーダーとなる者は、そうでなくてはならない。」
「おーい、縄!」
ほとんど一瞬で縛り上げると、俺の方を見ながら息を吐く。あれは呆れてる顔だ。
ごちん!
コブシが落ちる。
「痛いです お姉さま。」
「うん、痛いように殴った♡」
「・・・なぜ笑顔なのでしょう? お姉さま?」
「愛があるから♡」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「上に立つ者は笑ってなきゃ駄目だ。
上のモンが笑ってなきゃ、みんなが笑えない。」
姉ちゃんには、それが出来るんだよな~
リーダーの器、王の器だよな。
「うん、がんばって。」
俺はその器じゃない。
「なにいってんだ? がんばるのはおまえだろ~ 」
「は?!」
「がんばってね♡」
脇を締めてコブシを顎の前に揃える。ピーカブースタイルというやつだ。へたをすると殺られる、殺気と迫力が俺の呼吸を圧迫する。
「がんばってね♡」
摺り足で距離を縮め、射程圏内であることを示しつつ圧力をかけてくる。
「がんばってね♡ おと~さん♡」
トドメは言葉のヤイバだった、心臓をえぐられ心が崩れ落ちた。肉体は立ったままだったが、勝ち誇るように下腹部を撫でる姉ちゃんに、なすすべなど無かった。
まだ続きます。




