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不安

 丸太がきっかり三千本並べられ、それが見破られないよう草や蔦で飾られていた。

 そのことに気づいたのは戦闘準備を終えて、つまり魔獣の生け贄召還を行った後だった。

 魔族の王は狂っていた。

 狂わせたのは俺だ。

 戦争で幾度も生け贄召還を行った事で、兵士の命に対する感覚が狂ってしまった。敵が攻めて来たら召還獣で迎え撃つ事を、反射的に考えるようになっていた。

 しかし今回生け贄にしたのは魔族の嬰児だった。ラフン城内にも育児施設、繁殖部屋と言う方が実態に近いだろうか?

 女に子を産ませ兵士として、おそらく将校として育てる為の施設があった。エリート養成施設とはいっても、魔族の妊娠期間は三年と長く、発育も人族の三倍の時間がかかるらしい。城内にいることから純魔族であると考えていいだろう、過去の戦闘から魔族の王は選民思想の持ち主である。半魔族、人族混じりなど見たくも無いと考えていると思う。

 そのため今回生け贄にしたのは、城内の純魔族。城外から半魔族を連れてくる余裕など無かった。

 なにしろ敵がすぐそこにいる、正確にはすぐそこにいると思わせたのだ。

 魔族の王として考えれば、手の届く所にいる戦闘に使えない、だが生け贄召還になら使える『物』を使用するだろう。

 この策を思い付いたのは王が同族の異分子を殺した、処分した時だった。

 戦争状態での策としては正しいが、人道上は反吐が出るような考え方だ。

 俺の好き嫌いなど問題ではない、寡兵小戦力で戦争を終わらせるには無能非才の俺では、姑息な手段を選ぶしかない。

 同族をたやすく殺す王、この評判は魔族内部で広まる事で王の信頼を失墜させる。ましてや敵の策に踊らされた直後だ。

 魔族は離間策にはまった、王は気づいているだろう、俺の策について。しかし今信頼を失い冷静さを欠いた者がどうなるか・・・

 こちらにだけ都合よく考えるな、現実は常にどう転ぶか分からない。常に最悪の状況とその打開策を探せ、とくに勝利が近く感じられる時ほど足元を掬われやすい。

 策はすでに動いている。出来る事は少ない。

 状況が予想通りに推移している事に、注意を払いながら不安を腹の奥にしまっておこうとしていた。


 

 

 


 まだ続きます。

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